3月17日(水)は夜から東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「反復性発作の診断と治療」についての講義に参加してまいりました。「反復性発作」の中でわんちゃん・ねこちゃんに多い代表的な病気は「てんかん」です。今回は「てんかん」についてお話させて頂きます。
【てんかんの分類】
「てんかん」は病因によって「特発性てんかん」と「症候性てんかん」に分類されます。
「特発性てんかん」とは脳に器質的病変が存在せず、発作を起こす原因が遺伝的素因以外に認められないてんかんを指します。一般に発作がみられない時には脳波検査以外の臨床検査で異常所見が認められません。初発発作の発症年齢は1~3歳で最も多いです。わんちゃんに多く猫ちゃんでは比較的まれです。
「症候性てんかん」とは脳に発作の原因となる器質的病変が認められるてんかんのことで、脳腫瘍や脳炎、脳奇形(水頭症など)、脳血管障害などにより発作が反復する場合を指します。発作以外に神経学的検査で異常所見が得られることが多いです。発症年齢は原因疾患により様々です。(例えば脳腫瘍であれば7歳以上、水頭症であれば1歳未満に多いです)猫ちゃんでは症候性てんかんであることが多いです。
一般にわんちゃんでは約6~7割が「特発性」、猫ちゃんでは約6~7割が「症候性」であるといわれています。
【発生率】
わんちゃんはおおよそ1~2%、猫ちゃんでは0.5%程度と報告されています。
【診断】
問診、一般身体検査、臨床検査(血液検査、レントゲン検査、超音波検査など)、神経学的検査を行うことによって特発性てんかんまたは症候性てんかんの鑑別を行います。
ここで特発性てんかんをより確定的にするため、あるいは症候性てんかんの原因を見出すために追加検査へ進む場合があります。追加検査として脳波、MRI検査、脳脊髄液検査などがあります。
【治療】
一般的な治療法は抗てんかん薬を用いた内科的療法になります。
抗てんかん薬は一般的に「3ヵ月に2回以上の発作がみられる場合」「発作が群発(短時間に連続する発作(24時間以内に2回以上))あるいは重積(てんかん発作が30分以上持続している状態)する場合」「症候性てんかんが明らかな場合」に開始いたします。
最初は1種類の抗てんかん薬から開始し、1種類では良好なコントロールが得られない場合には2種類以上のお薬を併用していきます。副作用がみられる場合もあるため、1年に2回は血液検査をすることをお勧めします。
特発性てんかんでは一生涯治療が必要になることが多く、発作をいかにコントロールし、生活の質を維持していくかが治療の目標になります。一般に治療開始前の発作頻度にくらべ治療開始後の発作頻度が50%以下となることを目指します。抗てんかん薬による治療を行っていても、発作を100%抑制することができるケースはきわめてまれで、たいていの動物は治療を行っていてもいくらかの発作を示します。「てんかんは基本的に完治する病気ではない」こと、「治療を行っていても発作は出る」ことをあらかじめ認識しておく必要があります。また、抗てんかん薬を飲ませ忘れたり休薬した場合、一種の禁断症状がみられ発作がおきやすくなってしまうことがあるため、絶対に行ってはいけません。
てんかん患者のうち20~30%の症例は抗てんかん薬を用いても良好な発作コントロールができず、難治性てんかんと呼ばれます。逆に言うと70~80%の患者は適切な抗てんかん薬により発作をコントロールできます。
もうすぐで開業して1年がたちますが、当院でもてんかんをお薬でコントロールしているわんちゃんが何頭かいらっしゃいます。発作を完全には抑えることは難しいですが、少しでも生活の質をあげるお手伝いができればと思っております。
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