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猫のエーラス・ダンロス症候群(皮膚無力症)

猫のエーラス・ダンロス症候群(皮膚無力症)

投稿者 hagiwara | 外科, 形成外科, 治療例, 皮膚科

11ヵ月齢のチンチラの女の子が、肩部の皮膚の毛を噛んでひっぱってしまい皮膚がめくれてしまったとの主訴で来院されました。2ヵ月前と3ヵ月前にも同じようなことがあったとのことです。
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こちらが患部になります。広範囲に傷がみられ、皮膚がめくれてしまっています。
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お家に仲の悪い同居猫がいたり、お外で飼育されている猫ちゃんではケンカなどによって膿が貯留した後破裂しこのような病変がみられることがありますが、この子は室内で単頭飼育です。また膿が貯留していた様子もなかったとのことです。ここ以外の場所には皮膚病変は見当たりません。なお寄生虫・真菌検査は陰性です。

前回までは消毒で治ったそうですが、今回は病変部が広範囲で内科治療では治癒が難しいと思われます。飼い主様とご相談し、全身麻酔をかけて手術を行うことにしました。

バリカンで周囲の毛をかったところ皮膚が容易に傷つき、非常にもろく、異様に皮膚が伸びることがわかりました。皮膚はめくれて、傷口は直径8cm大にも及んでおり、皮下脂肪と筋肉は感染をおこしています。

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ここで「エーラス・ダンロス症候群」という病気を疑い、めくれた皮膚を切除し病理組織検査に提出しました。
感染はより広範囲に及んでいることがわかりました。
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感染した皮下脂肪・体幹皮筋を切除しました。
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創面が滑らかになりました。
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洗浄後、皮膚を縫合しました。
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2週間後、傷はほぼ癒合しています。
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この子の皮膚は前述したように驚くほどよく伸びます。飼い主様もこの事には以前からお気づきになられていたそうです。
皮膚の病理組織検査によって「エーラス・ダンロス症候群(皮膚無力症)」と診断されました。

【エーラス・ダンロス症候群(皮膚無力症)とは】
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コラーゲンの合成または線維形成の異常によって皮膚の異常な伸展性と脆弱性を示すのが特徴的な遺伝性の病気です。簡単にいうと、皮膚がよく伸び、もろくて容易にさけてしまう病気です。犬・猫では非常にまれであるといわれています。
臨床徴候・皮膚伸展指数の測定・病理組織検査結果に基づき診断します。
特異的な治療はありません。屋内飼育し、他の動物から隔離することにより、外傷を避けるようにします。動物の扱いや保定は皮膚を傷つけないように細心の注意を払います。
この子は皮膚がさけたのは今回で3回目だったのですが、今までなぜ簡単に皮膚がさけてしまったのかわからなかったそうです。今回の診察によってこの子はエーラス・ダンロス症候群で皮膚がうすくてもろいため、自分で少し毛をひっぱっただけで容易に皮膚がさけてしまったことが判明しました。

エーラス・ダンロス症候群は決して治る病気ではありませんが、今回診断がついたことによって、より皮膚を扱う際には注意が必要であることがわかりました。

お問い合わせ:TEL 042-531-3912

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