先日は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズ の「皮膚糸状菌症」についての講義に参加してまいりました。
【皮膚糸状菌症】
<原因>
犬・猫で皮膚糸状菌症の原因となる病原体は、主に以下の3つの菌種になります。
①Microsporum canis
犬で70%・猫で90%の原因菌。ヒトにも感染することが多いです。
②Microsporum gypseum
犬で20%の原因菌。土壌生息菌のため、口・肢端などに好発します。
③Trichophyton mentagrophytes
<症状>
多様な病変を示します。
好発部位は顔面・耳介・前肢・頚部・背側・尾・後肢など幅広いです。
紅斑・丘疹・膿疱・脱毛はみられますが、痒みは少ないか全くありません。
<診断・検査>
①ウッドライト試験:M.canisの50%が陽性になります。
②被毛・角質の直接鏡検
③培養
④DTM培地
毛を抜いて培地に置きます。糸状菌に感染していた場合、黄色い培地が赤色に変わり、白綿毛状のコロニーがでてきます。
<治療>
①患者への治療
(1) 抗真菌剤(ケトコナゾール・イトラコナゾールなど)の投与
(2) 毛刈り(特に長毛種)
(3) 外用療法(マラセブシャンプーなど)
②同居動物・人間の治療
ヒトにもうつることがあるため、注意が必要です。
③環境の改善
動物の寝具の廃棄・消毒
【実際の症例】
子猫ちゃんです。
両耳が脱毛しているとの主訴で来院されました。
診察台の上では皮膚が痒いのか、ずっと掻いたりなめたりしていました。
毛を培養したところ、培地が赤くなり白綿毛状のコロニーがはえてきました。
顕微鏡で検査したところ大分生子がみられたため、皮膚糸状菌症と診断し治療を開始いたしました。
<治療後>
だいぶ毛が生えてきました。
皮膚糸状菌症は典型的な皮膚症状がないため、見逃されがちです。皮膚炎がみられた場合、一度は除外しておくべきだと思われます。
生後半年がたちました。
大きくなりました。小顔で、顔がシャープできりっとしてます。男らしいです。
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