「リンパ腫」はわんちゃんに比較的多い悪性腫瘍です。リンパ腫には発生部位によって様々な型があり、なかでも一番多い「多中心型リンパ腫」では無治療での生存期間は4~6週といわれています。
リンパ腫の治療法には化学療法(抗がん剤)、外科療法、放射線療法がありますが、通常の第一選択は化学療法(抗がん剤)になります。
第一選択の抗がん剤は、
ドキソルビシン
ビンクリスチン
サイクロフォスファマイド
プレドニゾロン(ステロイド)
になります。
上記抗がん剤がすでに効かなくなったリンパ腫に対して実施される抗がん治療をレスキュープロトコールといいます。
今回、第一選択の抗がん剤に対し反応がみられなくなってしまったリンパ腫のわんちゃんに対し、レスキュープロトコールを行うことによって腫瘍の縮小がみられたためご紹介させて頂きます。
【症例】
パグ メス 3歳
「リンパ腫治療で様々な抗がん剤(ドキソルビシン・ビンクリスチン・サイクロフォスファマイド・メトトレキセート・L-アスパラギナーゼ・プレドニゾロン)を使用したが反応しなくなり腫瘍が大きくなってしまった。昨日から頚部が腫れて呼吸が苦しそう。」との主訴で来院されました。
全身のリンパ節がかなり大きくなっており、頚部は腫脹し浮腫がみられました。
まだ3歳なので若々しく、名前を呼ぶといつも顔を傾けてくれるかわいいわんちゃんです。
すでに第一選択の抗がん剤に対し反応がなくなっているため、各種レスキュープロトコールを提示いたしました。
【各種レスキュープロトコール】
現在、様々なレスキュープロトコールが報告されています。下記プロトコールの詳細(用量・副作用など)は日本語で詳しく記載された論文はないため、海外文献を読まなければなりません。このような時、英語が母国語だったらよいのになと思います。
薬剤 |
症例数 (例) |
反応率 (%) |
完全寛解率 (%) |
反応中央値 (日) |
|
44 |
41 |
30 |
― |
|
15 |
47 |
47 |
― |
|
43 |
27 |
7 |
86 |
|
117 |
65 |
31 |
61 |
|
54 |
62 |
44 |
61 |
|
31 |
87 |
52 |
63 |
|
57 |
35 |
23 |
83(CR) 25(PR) |
|
49 |
41 |
41 |
129 |
それぞれの利点・欠点、副作用、投与回数などについてご説明させて頂いたところ、L-アスパラギナーゼ+ロムスチンプロトコールを選択されました。
このプロトコールでは
L-アスパラギナーゼ
ロムスチン
を併用します。
投与したところ、翌週には全身のリンパ節はかなり小さくなり、呼吸はだいぶ楽になりました。
投与前までは呼吸困難で夜深く眠れませんでしたが、ぐっすり睡眠をとることができるようになりました。
この子は、みんなに「かわいい」といわれるのが大好きで、カメラ撮影も大好きだそうです。
少しでも良い状態を保つことができ、飼い主様やお家のわんちゃんと楽しい生活を送ることができればと思います。
コメント:0