6歳齢のラブラドール・レトリーバーの女の子が、10日前に気づいた左下顎のしこりを主訴に来院されました。
しこりは左下顎第2切歯~犬歯の歯肉にみられました。
周囲の歯はぐらついており、歯列異常が認められました。
わんちゃんの口腔内腫瘍は一般的に良性は約40%、悪性は約60%であるといわれています。
腫瘍の種類によって治療方法が異なるため、まずはしこりの一部を採材し、病理組織検査を行ったところ「悪性エナメル上皮腫」と診断されました。
「悪性エナメル上皮腫」はわんちゃんにまれにみられる悪性腫瘍で、以前ご紹介した口腔メラノーマに比べ遠隔転移性が低く、腫瘍が完全に切除できれば根治できる可能性もあります。しかし悪性腫瘍であるため、下顎骨を含めて切除しないとすぐに再発してしまう可能性が高いです。各治療法のメリット・デメリットを飼い主様にお話しし、ご相談の結果、腫瘍とともに下顎骨を切除することになりました(下顎骨部分切除術)。
【摘出した下顎骨】
病理組織検査に提出したところ、腫瘍は完全に切除できていると診断されました。
現在、術後1年3ヵ月が経過しておりますが、再発・転移は認められず、根治する可能性も十分考えられます。
口腔内腫瘍は早期発見・早期治療ができれば根治する可能性があります。しかし口腔内腫瘍は発見が遅れがちで、腫瘍が大きくなり奥方向や舌根部にまで浸潤してしまっている場合には、根治できる腫瘍も根治できなくなってしまいます。今回は、前方にできた腫瘍のため発見しやすかったのと、飼い主様が口腔内を定期的に観察して下さっていたのでこのような良い結果になったのだと思います。
口腔内にしこりがみられた場合にはお早めにご来院頂ければと思います。
コメント:0