本日は夜から東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズに参加してまいりました。今回は先月受講した腫瘍学の続きで、肥満細胞腫、リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、乳腺腫瘍についての講義でした。今回は乳腺腫瘍についてご説明させて頂こうと思います。
乳腺腫瘍はわんちゃんとねこちゃんで全く挙動が違いますので別々にご説明させて頂きます。
【わんちゃんの乳腺腫瘍について】
わんちゃんの乳腺腫瘍はメスの腫瘍としては最も多く(52%)、良性が50%、悪性が50%であり、約50%は多発性であるといわれています。ホルモン依存性腫瘍であり、早期に避妊手術することで予防する事ができる腫瘍です。
【避妊手術による乳腺腫瘍の予防効果(犬)】
避妊手術の時期 |
予防効果 |
初回発情前 |
95.5% |
1回発情後 |
92% |
2回発情後 |
74% |
2歳半以降 |
0% |
治療は主に外科手術になり、悪性腫瘍で脈管内に腫瘍細胞が浸潤していた場合、切除辺縁に腫瘍細胞が存在していた場合、悪性度が高い場合などは化学療法を併用することがあります。
【ねこちゃんの乳腺腫瘍について】
ねこちゃんの乳腺腫瘍は10万頭中25頭にみられ、99%は未避妊雌であるといわれています。わんちゃんの乳腺腫瘍とは異なり、悪性が約90%であり、遠隔転移をしやすい腫瘍であるといわれています。
【避妊手術による乳腺腫瘍の予防効果(猫)】
避妊手術の時期 |
予防効果 |
6ヵ月まで |
91% |
7~12ヵ月まで |
86% |
13~24ヵ月まで |
11% |
24ヵ月以上 |
0% |
*よって1歳以内に避妊手術をすると、将来、乳腺腫瘍になるリスクが低くなります。
猫ちゃんの乳腺腫瘍はほとんどが悪性であるため、治療は原則、片側乳腺摘出術(片側の第1~4乳腺を全て摘出する手術)になります。ただし、年齢・全身状態などを考慮して、違う術式をご提案させて頂くこともあります。
わんちゃん・ねこちゃん共に早期に避妊手術をすることによって乳腺腫瘍をある程度予防することができます。私自身、今まで乳腺腫瘍になったわんちゃん・ねこちゃんを何頭も診させて頂いているため、すごく多い腫瘍だという認識があります。しかし、今回の講義で「アメリカではほとんどのわんちゃん・ねこちゃんは早期に避妊手術をしているため、乳腺腫瘍はなくなりつつある」と聞き、大変驚きました。
避妊手術は早期にすれば乳腺腫瘍の発生率を低下させる事ができ、また卵巣と子宮を摘出するので、今後、卵巣の病気(卵巣腫瘍・卵胞嚢腫など)や子宮の病気(子宮蓄膿症・子宮水腫など)にならない、発情がなくなり、管理が楽になるというメリットはありますが、麻酔リスク・太りやすくなるなどのデメリットもございます。避妊手術を考えていらっしゃる方はお気軽にご相談ください。
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