先月末も院長と日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの心臓病の講義に参加してまいりました。今回は「僧帽弁閉鎖不全症の診断・治療」についての講義でした。
「僧帽弁閉鎖不全症」とは中高齢のわんちゃんに非常に多い心臓病の1つです。よって、至る所で頻繁に「僧帽弁閉鎖不全症」についてのセミナーが開催されています。知識をアップデートするためにできるだけ参加するよう心がけています。
この病気は進行するとX線検査や心臓エコー検査で心臓の拡大が認められます。今回はX線検査での心臓の拡大の評価方法の1つである「VHS」についてご説明致します。
【VHS(Vertebral Heart Size):胸骨心臓サイズ】
VHSとは胸部X線検査で心臓の拡大の程度を簡単に評価する方法です。
まず、心臓の長軸(赤線:L)を測定し、第4胸椎から椎骨何個分に相当するか測定します。次に心臓の短軸(青線:S)を測定し、第4胸椎から椎骨何個分に相当するか測定します。
一般的にVHSが10.5以上であった場合は心臓の拡大が疑われ、さらに11.5以上であった場合は気道を圧迫している可能性が高いといわれています。
文章だけではわかりにくいですので、実際のX線をみながらご説明致します。
【症例1】
健康診断で来院したわんちゃんです。
この子は特に心雑音がなく、心臓病の症状は一切みられません。
X線検査にて心臓の長軸を測定したところ椎骨6個分に相当し、短軸を測定したところ椎骨4個分に相当しました。よってVHSは6+4=10になります。
10.5以下であるため、X線検査では心臓の拡大は認められないということになります。念のため、心臓エコー検査をしたところ、やはり心臓の拡大は認められませんでした。
【症例2】
心雑音があり、心臓病の症状(咳・呼吸速拍)がみられる症例のX線です。
X線検査にて心臓の長軸を測定したところ椎骨6個分に相当し、短軸を測定したところ椎骨5.5個分に相当しました。よって、VHSは6+5.5=11.5になります。
10.5以上であるため、心臓の拡大が疑われます。また11.5以上であるため、気道を圧迫し咳がでている可能性が高いです。念のため、心臓エコー検査をしたところ、やはり心臓の拡大が認められました。
VHSを測定することによって客観的に心臓の拡大の進行を判断することができるため、私は毎回測定するよう心がけております。さらにその後、心臓エコー検査にて心臓内腔の状態を観察することをお勧めしております。
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