腫瘍科 記事一覧
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リンパ腫
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ビスフォスフォネート
先日はオンラインセミナーで骨吸収抑制剤である「ビスフォスフォネート」についての講義をうけました。

【ビスフォスフォネート】
<作用>
骨破壊を抑制し、骨塩量を増進する作用があります。
また、直接的抗腫瘍作用(転移の抑制・癌細胞の浸潤抑制・血管新生抑制など)もあるといわれています。<適応>
原発または転移性骨腫瘍による痛みの軽減
高カルシウム血症

論文を検索してみるとヒトで使用した報告は多数でてくるのですが、動物ではまだわずかしか報告がありません。すごく高価なお薬ですが、動物においても効果があったという報告が徐々にでてきています。
ビスフォスフォネート製剤は何種類かでておりますが、「ゾメタ」という商品(成分:ゾレドロン酸)を使用したことがあります。

全く治療反応がみられない子もいましたが、症状が顕著に改善した子もいましたので、原発性骨腫瘍・転転移性骨腫瘍の症例や他の治療に反応しない高カルシウム血症の症例に対して使用する価値はあると思います。
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脾臓の血管肉腫
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下顎歯肉に発生した悪性エナメル上皮腫(下顎骨部分切除術)
6歳齢のラブラドール・レトリーバーの女の子が、10日前に気づいた左下顎のしこりを主訴に来院されました。
しこりは左下顎第2切歯~犬歯の歯肉にみられました。
周囲の歯はぐらついており、歯列異常が認められました。
わんちゃんの口腔内腫瘍は一般的に良性は約40%、悪性は約60%であるといわれています。
腫瘍の種類によって治療方法が異なるため、まずはしこりの一部を採材し、病理組織検査を行ったところ「悪性エナメル上皮腫」と診断されました。
「悪性エナメル上皮腫」はわんちゃんにまれにみられる悪性腫瘍で、以前ご紹介した口腔メラノーマに比べ遠隔転移性が低く、腫瘍が完全に切除できれば根治できる可能性もあります。しかし悪性腫瘍であるため、下顎骨を含めて切除しないとすぐに再発してしまう可能性が高いです。各治療法のメリット・デメリットを飼い主様にお話しし、ご相談の結果、腫瘍とともに下顎骨を切除することになりました(下顎骨部分切除術)。
【摘出した下顎骨】
病理組織検査に提出したところ、腫瘍は完全に切除できていると診断されました。
現在、術後1年3ヵ月が経過しておりますが、再発・転移は認められず、根治する可能性も十分考えられます。
口腔内腫瘍は早期発見・早期治療ができれば根治する可能性があります。しかし口腔内腫瘍は発見が遅れがちで、腫瘍が大きくなり奥方向や舌根部にまで浸潤してしまっている場合には、根治できる腫瘍も根治できなくなってしまいます。今回は、前方にできた腫瘍のため発見しやすかったのと、飼い主様が口腔内を定期的に観察して下さっていたのでこのような良い結果になったのだと思います。
口腔内にしこりがみられた場合にはお早めにご来院頂ければと思います。
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学会発表 in 相模原 (2011年がん学会)
7月9日(土)・10日(日)はお休みを頂き、母校の麻布大学で開催された「第5回日本獣医がん学会」に参加してまいりました。がん学会は年に2回、東京と大阪で開催されますが、東京の学会には卒業してから毎年かかさず参加しています。
今回のシンポジウムのテーマは「肺腫瘍」でした。同級生2人がシンポジウムで発表し、アドバイザーをしていました。何百人もの聴講者の前で自分の意見をはっきり言っていて、2人ともすごいな~と思いました。
1日目に私も発表してきました。「上顎下顎に発生した悪性黒色腫に対し外科療法・放射線療法・化学療法を行った犬の1例」と、今回も長い題名をつけてしまいました。聴講者が少ないせいか、あまり緊張しなくてよかったです。
今回は春から少しずつ発表の準備をしていました。発表することによって、再度カルテを見直したり、論文を読んだりしてこの病気に対する知識が増えました。
機会があったら、また学会発表したいです。
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リンパ腫のレスキュープロトコール
「リンパ腫」はわんちゃんに比較的多い悪性腫瘍です。リンパ腫には発生部位によって様々な型があり、なかでも一番多い「多中心型リンパ腫」では無治療での生存期間は4~6週といわれています。
リンパ腫の治療法には化学療法(抗がん剤)、外科療法、放射線療法がありますが、通常の第一選択は化学療法(抗がん剤)になります。
第一選択の抗がん剤は、
ドキソルビシン
ビンクリスチン
サイクロフォスファマイド
プレドニゾロン(ステロイド)
になります。
上記抗がん剤がすでに効かなくなったリンパ腫に対して実施される抗がん治療をレスキュープロトコールといいます。
今回、第一選択の抗がん剤に対し反応がみられなくなってしまったリンパ腫のわんちゃんに対し、レスキュープロトコールを行うことによって腫瘍の縮小がみられたためご紹介させて頂きます。
【症例】
パグ メス 3歳
「リンパ腫治療で様々な抗がん剤(ドキソルビシン・ビンクリスチン・サイクロフォスファマイド・メトトレキセート・L-アスパラギナーゼ・プレドニゾロン)を使用したが反応しなくなり腫瘍が大きくなってしまった。昨日から頚部が腫れて呼吸が苦しそう。」との主訴で来院されました。
全身のリンパ節がかなり大きくなっており、頚部は腫脹し浮腫がみられました。
まだ3歳なので若々しく、名前を呼ぶといつも顔を傾けてくれるかわいいわんちゃんです。
すでに第一選択の抗がん剤に対し反応がなくなっているため、各種レスキュープロトコールを提示いたしました。
【各種レスキュープロトコール】
現在、様々なレスキュープロトコールが報告されています。下記プロトコールの詳細(用量・副作用など)は日本語で詳しく記載された論文はないため、海外文献を読まなければなりません。このような時、英語が母国語だったらよいのになと思います。
薬剤
症例数
(例)
反応率
(%)
完全寛解率
(%)
反応中央値
(日)
44
41
30
―
15
47
47
―
43
27
7
86
117
65
31
61
54
62
44
61
31
87
52
63
57
35
23
83(CR)
25(PR)
49
41
41
129
それぞれの利点・欠点、副作用、投与回数などについてご説明させて頂いたところ、L-アスパラギナーゼ+ロムスチンプロトコールを選択されました。
このプロトコールでは
L-アスパラギナーゼ
ロムスチン
を併用します。
投与したところ、翌週には全身のリンパ節はかなり小さくなり、呼吸はだいぶ楽になりました。
投与前までは呼吸困難で夜深く眠れませんでしたが、ぐっすり睡眠をとることができるようになりました。
この子は、みんなに「かわいい」といわれるのが大好きで、カメラ撮影も大好きだそうです。
少しでも良い状態を保つことができ、飼い主様やお家のわんちゃんと楽しい生活を送ることができればと思います。
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胸水・胸腔内腫瘍の画像診断(レントゲン・超音波診断)
2月16日は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「リンパ節、胸腔、腹腔の超音波診断、超音波ガイド下生検」についての講義に院長と参加してまいりました。今回は胸水・胸腔内腫瘍の画像診断(レントゲン・超音波診断)についてお話させて頂きます。
【胸水・胸腔内腫瘍の画像診断(レントゲン・超音波診断)】
★レントゲン検査→液体は白く空気は黒くうつります。
★超音波検査(エコー検査)→液体は黒くうつりますが、空気はよくうつりません。肺は酸素を交換するところで空気がたくさんある臓器なので、基本的にはよくうつらない臓器になります。しかし、胸腔内に液体が溜まっていると液体が黒くうつるため、肺や胸腔内の腫瘍などがよくみえるようになります。
【実際の症例】
★正常猫★
<胸部レントゲン検査>
心臓は血液が溜まっているため白くうつります。肺は空気が入っているため黒くうつります。
★胸水が貯留している猫★
<胸部レントゲン検査>
レントゲンで黒いはずの肺が白くうつっています。このような時は胸腔内に水が溜まっている(胸水)か、腫瘍の存在を疑います。
<超音波(エコー)検査>
胸水が貯留している時は、より詳しい精査のために胸腔の超音波検査を行います。エコーでは液体は黒くうつるので胸水は黒くうつります。超音波検査では、胸水貯留の程度や場所、腫瘍の有無などを確認します。
腫瘍がみつかりました。
超音波下で針生検したところ、「縦隔型リンパ腫」という悪性腫瘍でした。
★胸腔内に腫瘍がある猫★
<胸部レントゲン検査>
心臓の頭側に腫瘍が存在しています。
<超音波(エコー)検査>
超音波検査では内部に嚢胞を含んでいることがわかります。
超音波下で針生検したところ、胸腺腫疑いでした。
胸腔内のしこりや胸水の生検は超音波下で行うとより安全に行うことができます。画像診断(レントゲン・エコー)のみではしこりの診断名はつかないため、まずは針生検をお勧めしています。
ここ1年、胸水が貯留していたり、胸腔内に腫瘍がある子が立て続けに来院なさいました。呼吸困難に陥っている子が多いため、興奮させないように慎重に検査を行わなければなりません。
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犬の乳腺腫瘍
10歳のヨーキーの女の子が、乳腺のしこりを主訴に来院されました。今までの経過はこちらになります。
あまりにもしこりが大きくなってしまったので、歩くのも大変になってしまったそうです。
大きいしこりは2か所ですが、よく触診するとしこりは合計6個存在しました。
飼い主様とご相談した結果、状態が安定してから手術をすることにしました。
<摘出した乳腺>
摘出したしこりは、病理検査会社に提出します。
病理検査をする目的は、
①腫瘍の診断名
②悪性腫瘍だった場合、悪性度はどのくらいか
③腫瘍が完全に切除できているか
→悪性腫瘍はカニの足のように根をはりますので、表面だけ摘出しても摘出しきれていないことがあります。
④脈管内に腫瘍細胞の浸潤がないか→脈管内浸潤があると今後全身転移しやすいです。
⑤リンパ節転移がないかどうか→転移していると今後全身転移しやすいです。
などを調べるためです。
病理検査結果では2つは悪性腫瘍、4つは良性腫瘍と診断され、腫瘍は完全切除できていました。
ばんざいすると乳腺をよく観察できます。
すっかりきれいになって、よく歩けるようになりました。
わんちゃんの乳腺腫瘍は女の子の腫瘍としては最も多く(52%)、良性が50%、悪性が50%であり、約50%は多発性であるといわれています。
よって乳腺にしこりができた時は、早めに切除生検することをお勧めしています。
特に悪性腫瘍だった場合、下記の表のように腫瘍が大きくなればなるほど予後が悪くなるからです。
<腫瘍のサイズと再発率・転移率>
12ヵ月
24ヵ月
3cm未満
30%
40%
3cm以上
70%
80%
特に女の子のわんちゃんは定期的に乳腺を触診し、しこりがないかどうか確認することが大切です。基本的にわんちゃんの乳頭は左右に5個ずつで合計10個ついています。しこりができた場合は早期発見・早期治療が大切ですので、お早めにご来院ください。
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骨肉腫
こんにちは。獣医師の萩原です。7月10日(土)11日(日)はお休みを頂き、日本獣医がん学会に参加してまいりました。がん学会は1年に2回、夏は神奈川、冬は大阪で開催され、できる限り参加するようにしています。今回のメインテーマは「骨腫瘍」でした。今回は骨腫瘍の中でも最も多い腫瘍である「骨肉腫」についてご説明させて頂きます。
【骨肉腫】
わんちゃんの骨肉腫は大型犬の前肢に多発し(後肢の約2倍)、橈骨遠位端と上腕骨近位端が2大好発部位とされています。
遠隔転移率が高く、断脚術のみでの術後生存期間中央値は4ヵ月、1年生存率は10%と極めて低いといわれています。
【わんちゃんの骨肉腫】
<発生率>
全腫瘍中2~7%(骨格腫瘍の85%)
<発生年齢>
2歳と7歳(二相性の発生ピーク)(18~24ヵ月齢→15%)
<好発犬種>
大型犬(体重10kg以下は5%未満)
<性差>
なし
<発生因子>
外傷性・遺伝性など
<好発部位>
体軸(25%)(下顎>上顎>脊椎>頭蓋骨>肋骨>他)
四肢(75%)骨幹端>骨幹
2/3が前肢→橈骨遠位・上腕骨近位に多い
1/3が後肢→大腿骨遠位・脛骨近位に多い
<発生状況>
局所侵襲性が強い
リンパ節浸潤はまれ
遠隔転移性が強い
90%以上が初診時に微細転移巣があるといわれている。
関節を超えることまれ
<予後>
断脚術のみ→中央生存期間110日(4ヵ月)・1年生存率10%
断脚術+抗がん剤→中央生存期間6ヵ月~1年・1年生存率50%
【猫ちゃんの骨肉腫】
<発生率>
非常にまれ
<好発年齢>
10.2歳
<発生部位>
前肢<後肢(前肢の2倍)
体軸骨<長骨(体軸の2倍)
<発生状況>
80~90%が悪性腫瘍
犬より低侵襲性・低転移性
<予後>
断脚のみで中央生存期間2年
<性差>
なし
四肢の骨肉腫に対する断脚手術は根治目的以外に残された期間の生命の質を改善する対症治療としての意義も高く、骨肉腫の患肢を放置した場合には、腫瘍による自潰・腫脹・疼痛など飼い主様が見ていられない状態に陥ることが少なくありません。
足を取ってしまうのは残酷なようにみえるかもしれませんが、腫瘍の足を残すことによって自潰、疼痛がひどくなり、苦しむことになるので、わんちゃんにとっては足がない方が快適に過ごせます。私自身、骨肉腫で断脚した子を何例もみていますが、3本足でも上手に歩けるようになることがほとんどです。
骨肉腫の臨床症状は患肢跛行・患部の熱感・急速な患部腫脹・硬固な腫瘤・激しい疼痛などになります。このような症状がみられた場合はお早めにご相談ください。
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抗がん剤(化学療法)
この子は以前、ブログでご紹介した小腸腺癌を摘出した猫ちゃんです。現在、術後4ヵ月になります。
【術前】
【術後4ヵ月】
お腹の中の腫瘍なので、良くなったかどうかは外見ではわかりにくいのですが、表情も変わり、明らかに元気になったそうです。術前の体重は2.6kgだったのですが、術後4ヵ月がたった現在では4.0kgになりました。術前までの半年間は毎日吐いていたのですが、現在では嘔吐もなくなり順調に経過しています。
この子は腫瘍がリンパ節に浸潤していたため、術後、抗がん剤をはじめました。現在、1ヵ月に1回、「カーボプラチン」という抗がん剤を投与しており、今回、4回目の投与が終わりました。
【カーボプラチン】
白金化合物に分類される抗がん剤です。「抗がん剤」というと髪が抜けたり、嘔吐したりと副作用が怖いイメージがあるかもしれませんが、この抗がん剤は副作用はまれであり、わんちゃん・ねこちゃんともに非常に使いやすい抗がん剤の1つになります。
成分が白金(プラチナ)のため、昔は非常に高価で使いにくかったそうです。今は昔に比べると安価になって、わんちゃん・ねこちゃんでも一般的に使うようになってきました。
まれに嘔吐(軽度)・骨髄毒性などの副作用がみられることがありますが、投与前に血液検査で内臓の状態を把握しておけば、ほとんどの子で強い副作用がみられることはありません。万が一副作用がでた場合もすぐに対応できればさほど心配することはありません。
この子も抗がん剤による副作用は一切でず、逆に毎回抗がん剤投与直後に特に元気になるそうです。
今後も元気に暮らせるお手伝いができればと思っています。
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柴犬の上顎下顎に発生した口腔メラノーマ(悪性黒色腫)
11歳齢の柴犬の男の子が、1ヵ月前に気づいた左上顎のしこりが急速に大きくなっているとのことで来院されました。
しこりは左上顎歯肉に存在し、表面は自潰、出血しています。
わんちゃんの口腔内腫瘍は一般的に良性は約40%、悪性は約60%であるといわれています。
この子の場合もしこりが良性か悪性か、悪性であったらどんな腫瘍なのかを診断するために、まずはしこりの一部を採材し、病理組織検査を行ったところ「非上皮性悪性腫瘍(メラノーマ疑い)」と診断されました。非常に悪性度が強い腫瘍であるため、下の骨まで一緒に切除しないとすぐに再発してしまいます。そのため腫瘍とともに上顎骨を切除しました(上顎骨部分切除術)。
術後の病理組織検査では「メラノーマ(悪性黒色腫)」と診断されました。メラノーマはわんちゃんの口腔内悪性腫瘍の中でも最も悪性度が高く、周囲組織や骨への浸潤性が非常に強く、転移性の高い悪性腫瘍です。
術後、再発・転移を抑えるため、抗癌剤を開始しました。こちらも病理組織検査を行ったところ、上顎のしこりと同様、メラノーマでした。メラノーマは通常1箇所に発生する腫瘍であり、別の場所にできてしまうことはまれです。こちらも腫瘍とともに下顎骨を切除しました。(下顎骨部分切除術)
「上顎も下顎も摘出してしまって、ご飯を食べることはできるのだろうか?」と疑問に持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、ほとんどのわんちゃん、ねこちゃんでは顎がなくても上手にごはんを食べ、水を飲むことができるようになります。
その後、再発・転移ともになく、順調だったのですが、上顎骨部分切除術から3ヵ月半後に再発してしまいました。私の出身校で腫瘍の研修先でもあった麻布大学附属動物病院にご紹介し、CT撮影をしてもらいました。
CT撮影後、放射線療法を行いました。わんちゃんの場合、CT撮影、放射線療法ともに全身麻酔下で行います。
メラノーマは放射線療法への反応が良い腫瘍の1つです。現在、放射線療法後1ヵ月たちますが、腫瘍は縮小しています。
口腔メラノーマは無治療での中央生存期間が約2ヵ月といわれており、予後が非常に悪い悪性腫瘍ですが、この子は治療を開始してから半年が経過しています。オーナー様が非常に献身的で、この子も治療によく耐えてがんばっているので、このような良い結果に結びついているのだと思います。
口腔内にできた腫瘍は早期発見・早期治療ができれば根治できる腫瘍もありますが、発見が遅れがちです。気づいた時には手術もできないくらい大きくなってしまっているケースも少なくありません。定期的に口の中を観察し、しこりがないか確認してあげることが大切です。少しでも異常がみられた場合はお早めにご相談ください。
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腫瘍診断・治療について
当院では昨今わんちゃん、ねこちゃんで増えつつある腫瘍疾患に力をいれております。今回は腫瘍疾患の診断・治療についてご説明させて頂きます。
がん(悪性腫瘍)といっても進行度に応じて根治可能で治せるがんもあれば、治せないがんもあります。また根治不可能ながんでも、治療することにより症状が緩和されることがあります。【がんの臨床的病期】
<1期>
がんが限局し、完全な外科的切除や補助的化学療法などにより根治可能と思われる段階。
治療目的:がんを治すこと→積極的な外科治療や抗癌剤療法を勧めます。
<2期>
がんの完全な外科切除など根治的治療は不可能だが、全身状態が比較的良好で抗癌剤の投与や対症的手術により良好なQOL(生命・生活の質)が期待できる段階。
治療目的:がんの増大や転移などを抑制し、がんと共存して良好なQOLを維持すること。
<3期>
遠隔転移等による症状が出現した末期がんの段階。
治療目的:一般的な対症療法により、苦痛を軽減すること。【腫瘍診断の進め方】
1. 問診:年齢・病歴・腫瘤(しこり・マス)の発現時期・増大傾向・過去の治療歴の有無と反応。
2. 視診・触診:腫瘤の大きさ・色調・周囲への浸潤性・所属リンパ節の大きさ・硬さ・固着の有無。
3. 細胞診:細い針で腫瘤を刺し、採取された細胞を顕微鏡で観察します。良性悪性の判定、腫瘍の種類がわかることがあります。
4. レントゲン・超音波検査:腫瘤の構造や周囲組織への影響・肺や肝臓などへの遠隔転移の有無。他、心臓、肺、肝臓、腎臓、骨などの併発疾患の読影。
5. 血液検査:重要諸臓器機能や全身状態を評価。腫瘍随伴症候群の有無。
*腫瘍診断はがんの進行度と部位・症例の全身状態を十分に把握することが重要であるため、レントゲン・超音波検査・血液検査など、一通りの検査が必要になります。【腫瘍治療】
それぞれの治療法にも利点・欠点があります。また、腫瘍の種類によって効果のある治療法が異なってきます。腫瘍の種類や進行度によって様々な治療法をご提案させて頂きます。1. 外科療法
*利点:腫瘍減容積効果は最大。麻酔は1回。
*欠点:解剖学的・器質的欠損。強い侵襲。2. 放射線療法
*利点:解剖学的・器質的温存。外科困難な部位(脳・心臓など)でも可能。化学療法より細胞致死効果大。
*欠点:頻回の全身麻酔が必要。装置・人員が必要。3. 化学療法(抗癌剤):腫瘍の種類によって使用する抗癌剤を選びます。
*利点:装置・人員が不必要。散布された腫瘍細胞に有効。
*欠点:減容積効果低い。頻回の治療が必要。この3つの治療法が腫瘍治療の3本柱になります。
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回盲結腸部に発生した猫の小腸腺癌
猫 メス 11歳齢
主訴:半年前から2日に1回~1日2回位吐いている。体重減少。腹部触診にて右上腹部にマス(しこり)を触知しました。精査のため一通りの検査を行ったところ、超音波検査にて右上腹部の腸壁が8.2mmと肥厚していることがわかりました。(正常な回腸の壁は3mm以下です)
その後、マス(しこり)の場所をより詳細に調べるために、バリウム造影検査を行いました。食べ物は口→食道→胃→小腸(十二指腸→空腸→回腸)→大腸(盲腸→結腸→直腸)→肛門を通過し、便になります。この子の場合は小腸(回腸)末端までバリウムはスムーズに通過していくのですが、小腸(回腸)末端~大腸にかけての通過性が悪いため、マス(しこり)はその近辺にある可能性が示唆されました。
飼い主さんと相談し、後日試験開腹を行うことになりました。マス(しこり)は回腸末端に存在しました。回盲結腸部を切除し、腸を縫い合わせ、閉腹しました。
摘出した腸(回腸末端~盲腸~結腸)です
腸をあけると、回腸末端にはビニル袋などの異物がたくさん詰まっていました。
それらを取り除くと回腸粘膜にマス(しこり)があるのがわかりました。病理組織検査で「小腸腺癌」と診断されました。
回腸末端に癌ができたことによって通過しにくくなり、癌ができた前方の回腸に異物が詰まりやすくなり、不完全閉塞をおこし、連日のように吐いていたのだろうと思われます。
術後2週間経過し全抜糸しました。術後嘔吐は一度もみられず、体重も増えてきています。非常に順調です。
わんちゃん・ねこちゃん共に「高齢になってからよく吐くようになった」と相談をうけることがあります。そのような場合、まずは腎不全・肝不全・甲状腺機能亢進症など血液検査でわかる病気を除外して、レントゲン検査・超音波検査などによって腹腔内を精査します。「毛玉を吐いているのだから大丈夫だろう」と思い、来院が遅れて気づいた時には手遅れになってしまうケースがあります。お腹の中のしこりは外からみえないため発見が遅れがちです。吐いたり体重が減るには何か原因があるはずです。このような症状がみられましたらお早めにご相談ください。【小腸腺癌とは】
小腸にできた悪性腫瘍です。シャム猫に多く、ほとんどは回腸に発生するといわれています。食欲不振・嘔吐・体重減少・下痢・メレナ・しぶりなどの症状がみられます。転移(腸間膜リンパ節・肝臓・肺転移など)が高率にみられますが、手術で通過障害がある部分を切除することによって長期生存が得られることがあるといわれています。 -
口腔内腫瘍
口腔内にできた腫瘍は早期発見・早期治療ができれば根治できることがありますが、発見が遅れがちです。気づいた時には手術不適応になってしまっているケースも少なくありません。
【わんちゃんの口腔内腫瘍】
良性は約40%、悪性は約60%といわれています。
*良性腫瘍
エプリス・乳頭腫・骨腫など*悪性腫瘍
①メラノーマ(悪性黒色腫):約50%
②扁平上皮癌:約30%
③線維肉腫 など
この3つの腫瘍は「犬の3大口腔内悪性腫瘍」といわれ、特徴は以下のようになります。メラノーマ
扁平上皮癌
線維肉腫
周囲浸潤
+++
++
+
骨浸潤
+
++
++
リンパ節転移
+++
+
±
遠隔転移
+++
±
±
【ねこちゃんの口腔内腫瘍】
良性は約20%、悪性は約80%といわれています。
*良性腫瘍
エプリスなど*悪性腫瘍
扁平上皮癌:約50%小さい時から口の中をあけても嫌がらないよう慣れさせ、歯磨きなどによって定期的に口の中を観察し、おできがないか確認してあげることが大切です。
【口の中を観察されているハリー君】
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乳腺腫瘍
本日は夜から東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズに参加してまいりました。今回は先月受講した腫瘍学の続きで、肥満細胞腫、リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、乳腺腫瘍についての講義でした。今回は乳腺腫瘍についてご説明させて頂こうと思います。
乳腺腫瘍はわんちゃんとねこちゃんで全く挙動が違いますので別々にご説明させて頂きます。【わんちゃんの乳腺腫瘍について】
わんちゃんの乳腺腫瘍はメスの腫瘍としては最も多く(52%)、良性が50%、悪性が50%であり、約50%は多発性であるといわれています。ホルモン依存性腫瘍であり、早期に避妊手術することで予防する事ができる腫瘍です。【避妊手術による乳腺腫瘍の予防効果(犬)】
避妊手術の時期
予防効果
初回発情前
95.5%
1回発情後
92%
2回発情後
74%
2歳半以降
0%
治療は主に外科手術になり、悪性腫瘍で脈管内に腫瘍細胞が浸潤していた場合、切除辺縁に腫瘍細胞が存在していた場合、悪性度が高い場合などは化学療法を併用することがあります。
【ねこちゃんの乳腺腫瘍について】
ねこちゃんの乳腺腫瘍は10万頭中25頭にみられ、99%は未避妊雌であるといわれています。わんちゃんの乳腺腫瘍とは異なり、悪性が約90%であり、遠隔転移をしやすい腫瘍であるといわれています。【避妊手術による乳腺腫瘍の予防効果(猫)】
避妊手術の時期
予防効果
6ヵ月まで
91%
7~12ヵ月まで
86%
13~24ヵ月まで
11%
24ヵ月以上
0%
*よって1歳以内に避妊手術をすると、将来、乳腺腫瘍になるリスクが低くなります。
猫ちゃんの乳腺腫瘍はほとんどが悪性であるため、治療は原則、片側乳腺摘出術(片側の第1~4乳腺を全て摘出する手術)になります。ただし、年齢・全身状態などを考慮して、違う術式をご提案させて頂くこともあります。
わんちゃん・ねこちゃん共に早期に避妊手術をすることによって乳腺腫瘍をある程度予防することができます。私自身、今まで乳腺腫瘍になったわんちゃん・ねこちゃんを何頭も診させて頂いているため、すごく多い腫瘍だという認識があります。しかし、今回の講義で「アメリカではほとんどのわんちゃん・ねこちゃんは早期に避妊手術をしているため、乳腺腫瘍はなくなりつつある」と聞き、大変驚きました。
避妊手術は早期にすれば乳腺腫瘍の発生率を低下させる事ができ、また卵巣と子宮を摘出するので、今後、卵巣の病気(卵巣腫瘍・卵胞嚢腫など)や子宮の病気(子宮蓄膿症・子宮水腫など)にならない、発情がなくなり、管理が楽になるというメリットはありますが、麻酔リスク・太りやすくなるなどのデメリットもございます。避妊手術を考えていらっしゃる方はお気軽にご相談ください。
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悪性腫瘍について
本日は夜から東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズに参加してまいりました。今回は「腫瘍学」についての講義でした。
わんちゃん・ねこちゃん共に昔は感染症などで死亡することが多かったのですが、現在では予防医学の発達により人間と同様に高齢化が進み、腫瘍疾患が非常に増えています。1998年のデータではわんちゃんの死因の半分は悪性腫瘍で、ねこちゃんの死因のトップは悪性腫瘍といわれています。
悪性腫瘍を疑う症状として、腫瘤(おでき)の急速な腫大、再発性・難治性の膀胱炎・血尿(膀胱腫瘍の可能性)、鼻出血(鼻腫瘍の可能性)、治療への反応が悪い跛行(びっこ)(骨・関節の腫瘍の可能性)、口の潰瘍性病変(口腔腫瘍の可能性)などがありますが、その他、慢性的な体重減少、消化器症状、多飲多尿、慢性の嘔吐・下痢など非特異的な症状(どんな病気でもおこるような症状)がみられることもあります。このような症状がみられた場合にはお気軽にご相談ください。
当院も開業して7ヵ月たちましたが、皮膚腫瘍、乳腺腫瘍、口腔腫瘍、リンパ腫などになってしまい、治療をしているわんちゃん・ねこちゃんがおります。
人間と同様、わんちゃん・ねこちゃんも早期診断・治療することによって、根治する腫瘍もありますので、定期的に健康診断されることをお勧めします。
































































