皮膚科 記事一覧
-
院長が獣医皮膚科認定医試験に合格いたしました
少し前の話になりますが、当院の院長が日本獣医皮膚科学会認定医試験に合格いたしました。試験は毎年1回実施されておりますが、今年は9人合格したそうです。
日本獣医皮膚科学会認定医試験を受験するには以下の条件が必要になります。
(1)本邦の獣医師免許を有すること
(2)申請期限の日を含めて、3年以上継続して日本獣医皮膚科学会正会員であること
(3)認定医講習会研修18科目を6年以内に受講すること
(4)毎年開催される本会学術大会および他の学術事業1回以上(生涯教育セミナー、アジア獣医皮膚科専門医協会主催セミナー等)に出席して得られる修了証を6カ年以内に3カ年分取得すること
(5)海外獣医皮膚科学術会議に6年以内に1回以上参加すること
(6)過去6年以内に獣医皮膚科に関する筆頭学会発表が1報以上、さらに筆頭論文発表が1編以上あること
(7)3年以上の獣医一般診療の臨床経験を有し、過去3年間に主治医として皮膚科600症例(初診100症例含む)の診療実績を有すこと簡単にまとめると、国内・海外で開催される学会やセミナーに数多く参加し、皮膚病に関する学会+論文発表を行い、多数の皮膚科症例をみていないと試験を受けることができません。
上記条件を満たすと日本獣医皮膚科学会認定医試験を受けることができ、試験は筆記テスト+面接になります。受験資格が厳しいため、受験するまで何年もかかってしまい、難易度の高い試験になります。
院長は数年前より皮膚科認定医を目指しており、試験の数ヵ月前からは休日や仕事がある日も早朝や夜中に受験勉強をしていました。私も近くで努力している姿をみていたため晴れて合格することができてとても嬉しかったです。
認定医の更新には一定数の学会参加が必要になるため、今後も年に何回か院長が不在になることがありご迷惑をおかけいたしますが、皆様に質の高い医療を提供できるよう努力していきますのでよろしくお願いいたします。
2016年10月20日(木) 投稿者 hagiwara | お知らせ, 皮膚科, 立川市マミー動物病院スタッフ紹介, 立川市マミー動物病院ブログ
-
減感作療法
6月14日(日)はアトピー性皮膚炎とその治療法である減感作療法の勉強会に参加してまいりました。
本日は減感作療法についてご説明いたします。
【減感作療法とは?】
アレルギーの原因物質(アレルゲン)を特定し、アレルゲンを少しずつ量を増やしながら何回か投与することで、体を徐々にアレルゲンに対して慣れさせ、最終的に拒絶反応を起こさない体質に変えていく治療法です。
減感作療法はアトピー性皮膚炎を根治できることもあるため、大変良い治療法なのですが、頻繁に注射しなければならないため治療しにくいのが欠点でした。
そこで、去年、新しい減感作療法薬「アレルミューン」が日本で販売されました。
アレルミューンは犬アトピー性皮膚炎の主なアレルゲンの1つのハウスダストマイト(チリダニ)に含まれるタンパク質を、週1回ずつ徐々に用量を増やしながら5~6回注射することで症状を改善させる減感作療法薬です。
今までの薬と違い、週1回、5~6回の注射ですむため、大変治療しやすくなりました。
当院でも治療を開始しており、アトピー性皮膚炎をうまくコントロールできるようになった子がいます。
アトピー性皮膚炎でお困りの方はご相談頂ければと思います。 -
アトピー性皮膚炎
先日は皮膚病のセミナーに行ってまいりました。
主に犬のアトピー性皮膚炎についての講義でした。
【アトピー性皮膚炎】
アトピー性皮膚炎は一般的に痒みを伴いますが、痒みを伴う皮膚病の全てがアトピー性皮膚炎というわけではありません。痒みがでる他の皮膚病を検査で除外することが大切です。
<診断の手順>
①外部寄生虫症の検査・治療
皮膚検査で外部寄生虫を除外します。特に疥癬・ノミに感染すると痒みを伴いますので除外することが大切です。②合併症の検査・治療
皮膚検査などで他に合併症がないかどうか調べます。特に膿皮症とマラセチア性皮膚炎は痒みを伴うことが多いので除外することが大切です。
③アトピー性皮膚炎の臨床的事項との一致
*アトピー性皮膚炎の臨床的特徴*
慢性の強い痒みがあり、徐々に悪化
初発年齢が3歳以下
犬種が好発犬種
病変分布が頭部・体幹腹側・四肢内側と先端
上記と一致しているか確認します。
アトピー性皮膚炎はヒトにおいても有名な病気のため痒みを伴う皮膚病はアトピー性皮膚炎だと思われがちですが、痒みを伴う皮膚病はアトピー性皮膚炎のみではありません。まずは外部寄生虫やその他感染症がないかどうか各種検査で調べることが大切です。
-
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
7歳齢のシーズーの男の子が歩行を嫌がるとの主訴で来院されました。
X線検査にて明らかな骨・関節の異常は認められませんでしたが、肉球には石灰沈着がみられ、一部出血が認められました。
その他、多飲多尿も認められたため特にクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)を疑い、全身精査を行うことになりました。
超音波検査にて左副腎は8.7mm、右副腎は7.8mmであり、左右副腎ともに腫大が認められました。(正常のわんちゃんの副腎は6mm以下になります)
ACTH刺激試験にてコルチゾールはpreが4.5、postが65.8でした。(postが25以上だった場合、クッシング症候群を疑います。)
以上の所見よりクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)を疑い、各種治療オプションを提示したところ、飼い主様は飲み薬による治療を選択されました。【クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)】
副腎皮質から分泌されるホルモンの過剰分泌によっておこる病気です。<原因>
下垂体腫瘍(80%)または副腎腫瘍(20%)<症状>
多飲多尿、多食、皮膚の菲薄化、左右対称性の脱毛、肥満、腹部膨満、発作など<治療>
内科療法・放射線療法・外科療法があります。各々の治療法においてメリット・デメリットがございますので飼い主様と相談の上、治療方針を決めていきます。 -
シャンプーの方法
先日は皮膚病の外用療法についてのセミナーに行ってきました。
今回は外用療法の1つであるシャンプーの方法についてご説明致します。
【シャンプーの方法】
①30℃以下の水で肌をよくぬらします。(約5分間)
特に長毛種、下毛や抜け毛の豊富な犬種では、シャンプー前に毛刈りをすると非常に効果的な場合があります。
皮膚の上に直接シャンプーをつけて泡だてるより、大型スポンジなどで事前に泡立てて使用した方が刺激が少なく経済的だそうです。
薬用シャンプーは症状の目立つところから開始すると、より長く肌に薬用成分を付着させることができます。
皮膚病の子はシャンプーを併用すると飲み薬の量を減らせる場合がありうまくコントロールできることがあります。飲み薬と違いほとんど副作用がないため、良い治療法だと思います。
現在、わんちゃん用のシャンプーは多数販売されており、皮膚の状態によってシャンプーを使い分けています。皮膚病でお悩みの方はまずはご相談頂ければと思います。
-
パターン脱毛症
先日は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「非炎症性の脱毛症」についての講義を受けました。
今回はその1つである「パターン脱毛症」についてお話し致します。
【パターン脱毛症】
部分的に左右対称性の脱毛が進行する遺伝性疾患<好発犬種>
ダックスフンド・ボストンテリア・チワワ・イタリアン・グレーハウンド・チャウチャウ・ミニチュアピンシェルなど
<発症時期>
6ヵ月頃から<好発部位>
耳介後部、胸部、大腿後側。病変は左右対称性にみられる。
<診断>
まずは内分泌疾患など他の皮膚病を除外
→確定診断は病理組織検査<治療>
根治は困難
メラトニンが効くことがあるが、治療が奏効するとは限らない。
脱毛症は様々な原因によっておこり病気によって治療法が異なりますので、他の病気を除外してから治療にはいります。
-
外用薬
先日はアトピー・アレルギーの勉強会に行ってきました。
今回は皮膚病の治療で使用することの多い外用薬についてお話し致します。
【外用薬】
<用量>
ローションでは1円玉サイズの量で、手のひら2枚分の範囲に塗布する。
軟膏・クリームでは径5mmのチューブで人差し指先端から第1関節までの量(約0.5g)を手のひら2枚分の範囲に塗布する。
<頻度>
導入期 1日1~2回
維持期 間隔延長
塗布のタイミング:食事前・遊びや散歩の前・就寝前
外用薬は患部のみに作用するため、一般的に内服治療に比べ副作用を抑えることができます。ただ動物の場合、外用薬を塗布したところを余計気にしてなめたり掻いたりしてしまうことがありますので、注意が必要です。
ハリー君もお鼻の脱毛部に発疹ができやすく血が出るまで掻いてしまうため、つい最近まで外用薬を塗っていました。今では発疹もなくなり順調です。
-
肉芽腫性脂腺炎
先月の出来事になりますが、日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの皮膚病の講義に参加してまいりました。今回は「肉芽腫性脂腺炎」という珍しい皮膚病についてご説明致します。
【肉芽腫性脂腺炎】
脂腺の消失と炎症性細胞の浸潤により発生する疾患で、その原因には免疫介在性の脂腺破壊、角化異常に伴う脂腺導管の閉塞による脂腺炎、脂腺代謝異常に伴う角化および皮脂の産生異常など様々な可能性が推測されています。<症状>
大量の大型で光沢のある落屑とびまん性の鱗屑、脱毛<好発犬種>
秋田犬・スタンダードプードル(どの犬種にも起きる可能性)<初発年齢>
中齢(若齢でも老齢でもない)<予後>
治癒は期待できず徐々に悪化することが多い。<治療>
ビタミンA
シクロスポリン
シャンプー(角質溶解性シャンプー)
保湿剤この皮膚病は私も院長も大学病院では診たことがあるのですが、当院ではまだ診たことがありません。珍しい病気で、かつ好発犬種である秋田犬を飼っていらっしゃる方が少ないからでしょうか。
-
犬の脱毛症X(アロペシアX)
ポメラニアン 去勢オス 4歳齢
主訴:3ヶ月程前より被毛が薄くなってきた。
疾患の鑑別のため各種皮膚検査、血液検査、画像検査、尿検査、皮膚生検(皮膚の一部を切除し、組織学的に検査をする)を行いました。
毛根の拡大図:休止期毛ばかりがみとめられました。
局所麻酔下でパンチ生検を行いました。
病理検査所見では重度の毛包萎縮が見られました。
検査所見より、感染症、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症を否定し、脱毛症X(アロペシアX)を疑いました。
治療としてメラトニンの投与を開始しました。
数ヶ月後、発毛傾向がみられました。
アロペシアXとは成犬になってから発症することのある、進行性、両側対称性、非炎症性、非掻痒性の脱毛疾患で、ポメラニアン、プードル、ハスキーなどの北欧犬種に好発します。
副腎という臓器の性ホルモン産生の不均衡が原因として示唆されていますがまだはっきりとしていないため、脱毛症Xという疾患名で呼ばれています。
治療としては去勢手術、メラトニン、トリロスタン、成長ホルモンなどが報告されていますがどれも確実に効果がみられるというわけではなく、改善後に再発する事もありますので慎重に経過を観察する必要があります。
-
論文発表(獣医臨床皮膚科(2011年9月号))
2011年9月号の獣医臨床皮膚科に当院で診察した皮膚無力症の猫ちゃんの症例報告が掲載されました。
非常に珍しい病気だったので飼い主様にお願いして論文投稿の許可を頂き、執筆させて頂きました。私は日本語で論文を書くのはさほど苦にはなりませんが、今回は英作文があったためつらかったです。
書こうと決めてから掲載されるまで、なんと1年半もかかってしまいました!学会誌は途中に専門家の先生方による審査が入り、何度か修正が必要になるため投稿まで時間がかかります。さらに自分がのんびり屋なのでこんなに時間がかかってしまったのだと思います。
今回は当院で切除した皮膚を大学の先生方にみて頂き、アドバイスを頂きました。
大学の先生のアドバイスなしで自分一人の力で投稿するのは難しかったと思います。
卒業してからも専門家の先生方のアドバイスを頂くことができ、恵まれた環境で勉強することができて自分はすごく幸せだなと思います。
また機会があったら論文投稿したいです。 -
皮膚糸状菌症(カビ)
先日は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズ の「皮膚糸状菌症」についての講義に参加してまいりました。
【皮膚糸状菌症】
<原因>
犬・猫で皮膚糸状菌症の原因となる病原体は、主に以下の3つの菌種になります。
①Microsporum canis
犬で70%・猫で90%の原因菌。ヒトにも感染することが多いです。
②Microsporum gypseum
犬で20%の原因菌。土壌生息菌のため、口・肢端などに好発します。
③Trichophyton mentagrophytes
<症状>
多様な病変を示します。
好発部位は顔面・耳介・前肢・頚部・背側・尾・後肢など幅広いです。
紅斑・丘疹・膿疱・脱毛はみられますが、痒みは少ないか全くありません。
<診断・検査>
①ウッドライト試験:M.canisの50%が陽性になります。
②被毛・角質の直接鏡検
③培養
④DTM培地
毛を抜いて培地に置きます。糸状菌に感染していた場合、黄色い培地が赤色に変わり、白綿毛状のコロニーがでてきます。
<治療>
①患者への治療
(1) 抗真菌剤(ケトコナゾール・イトラコナゾールなど)の投与
(2) 毛刈り(特に長毛種)
(3) 外用療法(マラセブシャンプーなど)
②同居動物・人間の治療
ヒトにもうつることがあるため、注意が必要です。
③環境の改善
動物の寝具の廃棄・消毒
【実際の症例】
子猫ちゃんです。
両耳が脱毛しているとの主訴で来院されました。
診察台の上では皮膚が痒いのか、ずっと掻いたりなめたりしていました。
毛を培養したところ、培地が赤くなり白綿毛状のコロニーがはえてきました。
顕微鏡で検査したところ大分生子がみられたため、皮膚糸状菌症と診断し治療を開始いたしました。
<治療後>
だいぶ毛が生えてきました。
皮膚糸状菌症は典型的な皮膚症状がないため、見逃されがちです。皮膚炎がみられた場合、一度は除外しておくべきだと思われます。
生後半年がたちました。
大きくなりました。小顔で、顔がシャープできりっとしてます。男らしいです。
-
疥癬(カイセン)
先週は久しぶりに東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズ の「皮膚病(皮膚の解剖と機能・疥癬(カイセン)・毛包虫)」についての講義に参加してまいりました。
本日は疥癬(カイセン)についてお話させて頂きます。
【疥癬(カイセン)】
<原因>
犬:イヌセンコウヒゼンダニ
猫:ネコショウセンコウヒゼンダニ
いずれのダニも宿主特異性が強いですが、ネコショウセンコウヒゼンダニは犬に感染することがあり、ヒトに対して一時的な病変をつくることがあります。
<症状>
感染してから発症まで1~3週間であるといわれており、感染した動物は重度の掻痒性皮膚炎を呈し、紅斑性丘疹、脱毛、フケが認められます。
病変の好発部位は耳介辺縁・肘部・膝・腹側胸部・腹部になります。
<診断>
類似する疾患には膿皮症、ノミアレルギー、マラセチア性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどがあります。
確定診断は皮膚掻爬検査(スクレーピング検査)によりヒゼンダニを検出することになります。
広範囲にわたる皮膚掻爬検査(スクレーピング検査)を行ってもヒゼンダニが検出されないことが多いことから、病変や問診により本疾患が疑われる場合にはヒゼンダニの駆虫を試験的に開始します。
40%がステロイドに反応するため、アトピー性皮膚炎と誤診しやすいので注意が必要です。
<治療>
最も一般的な治療はイベルメクチンの投与になります。その他、様々な薬がでており、各々メリット・デメリットがございますのでご相談しながら治療をしていきます。
【爪を切ってもらっているハリー君】
ハリー君はおとなしく爪を切らせてくれます。ハリー君はどこを触っても嫌がらず、されるがままです。
ハリー君も子犬の時、疥癬にかかり痒みが強くでたそうです。治療したらすぐによくなりました。
-
猫の痒い皮膚病・皮膚スクリーニング検査
2月17日は東京農工大学のセミナーに参加してまいりました。勉強会は都内で行われることが多いため、いつもは電車で1~2時間くらいかけていくことが多いのですが、農工大学へは車で40分くらいで行くことができるので行き帰りの運転が楽でした。
今回は「猫の掻痒(=痒い)性皮膚疾患」についての講義に参加してまいりました。【猫の痒い皮膚病に対するアプローチ】
まずは、
①感染症(外部寄生虫(猫疥癬・耳疥癬・ツメダニ・ノミ)・皮膚糸状菌、マラセチアなど)を除外します。その次に、
②アレルギー性皮膚炎(食物アレルギー・アトピー性皮膚炎)または
③その他の皮膚疾患(自己免疫性皮膚疾患、ウィルス性皮膚疾患、深在性真菌症など)を除外します。わんちゃんも、猫ちゃんも「痒い=アレルギー」だと思われがちですが、実はアレルギーではなくて感染症であるケースが非常に多いです。よって、感染症はまず最初に除外しなければなりません。
感染症を除外するには以下の検査が必要になります。【皮膚スクリーニング検査】
①皮膚掻爬検査(スクレーピング検査)
皮膚をけずりとって顕微鏡でみる検査になります。
②スタンプ検査
セロハンテープなどで皮膚の表面の細胞をペタペタとって、染色して顕微鏡で観察します。
③真菌培養
毛を抜いて培地に置きます。糸状菌に感染していた場合、黄色い培地が赤色に変わります。
④細菌培養・同定・抗生物質感受性試験
中に入っている滅菌綿棒で患部をぬぐい、どんな菌が増えているか、菌が増えていた場合どんな抗生物質に対して反応があるかどうかを調べる検査です。
これらの検査は時間がかからず、動物にも負担もかからず簡単に行うことができるので、皮膚が痒いときにはまずこれらの検査をして感染症を除外することをお勧めします。
-
ハリー君★雑誌デビュー
こちらは獣医学雑誌です。先月号の遺伝病の特集に、
当院のアニマルスタッフ・ハリー君が載りました。
ハリー君は以前にもご紹介したように「家族性皮膚筋炎」という皮膚の遺伝病です。(*わんちゃんにうつる病気ではありません)
私たちの大学時代の同級生が母校の大学病院で皮膚科の診察を担当しており皮膚の遺伝性疾患を雑誌に執筆するため、ぜひハリー君を掲載したいとのことで写真を撮りに来てくれました。
いつものハリー君はカメラ目線ですが、極度の人見知りのため緊張してしまいました。目をそらしてしまい、目の焦点があっていません。
ハリー君は鼻の上の毛がないですが、以前に比べたらだいぶ毛が生えてきたそうです。
ハリー君はもともとペットショップにいたわんちゃんで、当院にきたのは去年の8月でした。当院にきたばかりの時は私の事を怖がり1ヵ月間くらいなつかず、私をみると震えたり吠えたりおもらししたりしていました。
今ではとてもなついてくれて、膝の上にのるのが大好きです。
【膝の上でうっとりしているハリー君】
ハリー君は普段は入院犬舎や処置室にいるため、入院中のわんちゃん・ねこちゃんとのご面会の際に飼い主様が入っていらっしゃると怖くなって吠えてしまうことがあり、ご迷惑をおかけしております。
少しずつ社交的になっていくと思いますので、これからもハリー君をよろしくお願いいたします。
-
マラセチア性皮膚炎(脂漏性皮膚炎)
6月30日(水)の休診日は「マラセチア性皮膚炎(脂漏性皮膚炎)」についての勉強会に参加してまいりました。マラセチア性皮膚炎(脂漏性皮膚炎)は梅雨時に多い皮膚病の1つです。
【マラセチア性皮膚炎(脂漏性皮膚炎)】
<マラセチアとは>
マラセチアは真菌(カビ)の一種で、全てのわんちゃんの皮膚に住んでいる「常在菌」です。健康な皮膚では問題になることはありませんが、何らかの理由で皮脂の分泌が増えすぎたり(脂漏)、アトピーや他の皮膚炎などで皮膚の抵抗力が落ちると異常増殖し、皮膚炎を悪化させます。マラセチアは皮脂分を好み、皮脂のたまりやすいわきの下、内股、指の間、耳、お腹、下あご、肛門の周りなどで増殖して炎症・痒みを発症します。(よってマラセチア性皮膚炎は脂漏性皮膚炎ともよばれています)スタフィロコッカス(ブドウ球菌)という細菌がマラセチア性皮膚炎を悪化させる要因の1つとも考えられています。<症状>
強い赤み、痒みが特徴で、ベタベタしたり、独特の臭いがする脂っぽいフケを伴います。慢性化すると皮膚が黒ずんだり(色素沈着)、表面にコケが生えたようになったり(苔癬化)、毛が抜けたりする場合があります。<好発犬種>
シーズー・ダックスフンド・プードル・マルチーズ・チワワ・コーギー・ポメラニアン・パグ・フレンチブルドック・ビーグル・ゴールデンレトリーバー・キャバリア・柴犬など<治療>
異常増殖したマラセチアは放っておくと、皮脂分を栄養にしてさらに増え続け皮膚炎が悪化します。治療は①抗真菌剤の投与(内服薬)と②外用療法(主にシャンプー)で、増えすぎたマラセチア菌を減らし、過剰に分泌された皮脂分を取り除きます。【実際の症例】
ミニチュア・ダックスフンド・9歳・避妊メスこの子は典型的なマラセチア性皮膚炎のわんちゃんです。「皮膚の痒み・脱毛・発赤・べたつき・フケ」を主訴に来院されました。皮膚検査にて全身性にマラセチアが増殖しているのが判明したため「マラセチア性皮膚炎」と診断しました。抗真菌剤の投与とシャンプー療法を行ったところ、皮膚炎は落ち着きました。
【マラセチア性皮膚炎シャンプー:マラセブシャンプー】
マラセブシャンプーはマラセチア性皮膚炎に非常に効果のあるシャンプーなのですが、つい最近まで日本で販売しておらず、海外でしか購入できませんでした。よって獣医師は海外から輸入したり、ヒト用のマラセチア用のシャンプーを使用していました。
マラセブシャンプーにはマラセチアを殺す作用がある「ミコナゾール硝酸塩」とスタフィロコッカス(ブドウ球菌)を殺す作用がある「クロルヘキシジングルコン酸塩」を含有しており、皮膚の上で増えすぎた菌を減らします。また洗浄成分を配合しているので余分な皮脂分や汚れを洗い流します。
マラセブシャンプーはお薬を含有していますので、10分間皮膚につけた状態で保つことが重要です。10分間何もしないで待つのは大変ですが、症状の重いところから洗いはじめればあっという間に10分たつと思います。
<使用量>:以下のようになります。
体重
1回当たりの投与量
1.5~3kg未満
5~10ml
3~5kg未満
10~15ml
5~10kg未満
15~25ml
10~15kg未満
25~30ml
15~20kg未満
30~40ml
20~30kg未満
40~50ml
30~40kg未満
50~60ml
40~50kg未満
60~70ml
手のひらに500円玉1枚分のシャンプーをたらすと約5mlになるそうです。いちいち量るのは大変なので、これをもとに計算すると楽ですね。
マラセブシャンプーの説明はこちらになります。
マラセブシャンプーの宣伝みたいになってしまいましたが、このシャンプーが日本で発売されるのを待ち望んでいましたので大変ありがたいと思っています。今後、マラセチア性皮膚炎で困っている子にお勧めしたいと思っています。
-
猫のエーラス・ダンロス症候群(皮膚無力症)
11ヵ月齢のチンチラの女の子が、肩部の皮膚の毛を噛んでひっぱってしまい皮膚がめくれてしまったとの主訴で来院されました。2ヵ月前と3ヵ月前にも同じようなことがあったとのことです。
こちらが患部になります。広範囲に傷がみられ、皮膚がめくれてしまっています。
お家に仲の悪い同居猫がいたり、お外で飼育されている猫ちゃんではケンカなどによって膿が貯留した後破裂しこのような病変がみられることがありますが、この子は室内で単頭飼育です。また膿が貯留していた様子もなかったとのことです。ここ以外の場所には皮膚病変は見当たりません。なお寄生虫・真菌検査は陰性です。
前回までは消毒で治ったそうですが、今回は病変部が広範囲で内科治療では治癒が難しいと思われます。飼い主様とご相談し、全身麻酔をかけて手術を行うことにしました。
バリカンで周囲の毛をかったところ皮膚が容易に傷つき、非常にもろく、異様に皮膚が伸びることがわかりました。皮膚はめくれて、傷口は直径8cm大にも及んでおり、皮下脂肪と筋肉は感染をおこしています。
ここで「エーラス・ダンロス症候群」という病気を疑い、めくれた皮膚を切除し病理組織検査に提出しました。
感染はより広範囲に及んでいることがわかりました。
この子の皮膚は前述したように驚くほどよく伸びます。飼い主様もこの事には以前からお気づきになられていたそうです。
皮膚の病理組織検査によって「エーラス・ダンロス症候群(皮膚無力症)」と診断されました。【エーラス・ダンロス症候群(皮膚無力症)とは】
コラーゲンの合成または線維形成の異常によって皮膚の異常な伸展性と脆弱性を示すのが特徴的な遺伝性の病気です。簡単にいうと、皮膚がよく伸び、もろくて容易にさけてしまう病気です。犬・猫では非常にまれであるといわれています。
臨床徴候・皮膚伸展指数の測定・病理組織検査結果に基づき診断します。
特異的な治療はありません。屋内飼育し、他の動物から隔離することにより、外傷を避けるようにします。動物の扱いや保定は皮膚を傷つけないように細心の注意を払います。
この子は皮膚がさけたのは今回で3回目だったのですが、今までなぜ簡単に皮膚がさけてしまったのかわからなかったそうです。今回の診察によってこの子はエーラス・ダンロス症候群で皮膚がうすくてもろいため、自分で少し毛をひっぱっただけで容易に皮膚がさけてしまったことが判明しました。エーラス・ダンロス症候群は決して治る病気ではありませんが、今回診断がついたことによって、より皮膚を扱う際には注意が必要であることがわかりました。
-
わんちゃんのシャンプー
本日は製薬会社の方にシャンプーの院内セミナーを開催して頂きました。今回はシャンプーのお話をさせて頂こうと思います。
よくわんちゃんを人間用のシャンプーで洗ってもよいのでしょうかという質問をうけます。まずは人間とわんちゃんの皮膚の違いについてご説明させて頂きます。
人間の皮膚は弱酸性ですが、わんちゃんの皮膚は弱アルカリ性だといわれています。また、表皮(皮膚の一番上の層)は人間では10~15細胞層あるのですが、わんちゃんは3~5細胞層であり、人間に比べたら1/3しか厚みがないといわれています。
よく弱酸性のシャンプーやボディソープが宣伝されていますが、わんちゃんの皮膚は弱アルカリ性なので、人間用のシャンプーはわんちゃんに適しているとはいえません。わんちゃん専用のシャンプーや保湿剤を使用されることをお勧めします。現在、わんちゃんのシャンプーはたくさんの種類が販売されているため、どのシャンプーを使えばよいのか迷われてしまうかと思います。
まず、皮膚の状態が良いわんちゃんはペットショップ又は病院で市販されているシャンプーで問題がないかと思います。
しかし、皮膚のトラブルがおきやすい、もしくは今現在皮膚のトラブルがおこっているわんちゃんは一度受診されることをお勧めしています。
皮膚病は主にアレルギー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、感染性皮膚炎に分けられ、その症状にあったシャンプーを処方させて頂きます。【当院で使用しているシャンプー】
例えば、フケの多いわんちゃんには、まずフケがでる原因を調べます。フケがでる原因がみつかった場合はそちらの治療を行いつつ、過剰な角質や脂質を除去し、皮膚のターンオーバーを正常化させる効果があるシャンプーを使用します。
このように、シャンプーには人間と同様、洗浄を目的に使用する場合もありますが、皮膚病の外用療法として用いることがあります。
どのシャンプーを使用すれば良いか悩んでいらっしゃる方は、ぜひ一度ご相談くださいね。