肝疾患 記事一覧
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総胆汁酸(TBA)
先週は渋谷で開催された肝臓病と甲状腺機能亢進症のセミナーに参加してまいりました。
今回は肝機能検査である総胆汁酸(TBA)についてご説明いたします。
【総胆汁酸(TBA)】
感度・特異性に優れた(=検出率が高く精度がよい)肝機能検査です。<検査方法>
12時間絶食→採血→絶食時総胆汁酸(TBA)測定
食事を与え、2時間後に食後総胆汁酸(TBA)測定<基準値>
犬:空腹時:<20nmol/ml 食後<25nmol/ml
猫:空腹時:<15nmol/ml 食後<20nmol/ml当院においても一般的な術前検査や血液検査などで異常値がみられた場合などに総胆汁酸(TBA)の測定をお勧めすることがありますが、採血が絶食時と食後2時間後の計2回必要になりますので、お預かりして検査することが多いです。
総胆汁酸が上昇している場合、門脈シャント、原発性門脈低形成(肝微小血管異形成)、その他肝疾患など肝機能が低下するような病気である可能性が考えられるため、追加検査をするかご相談になります。
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肝リピドーシス
先日は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズに参加し、犬と猫の代表的な肝疾患について勉強してまいりました。
本日は肝リピドーシスについてご説明いたします。
【肝リピドーシス】
肝細胞への過剰な脂肪蓄積によりおこる肝機能障害
中年齢の肥満猫に多い肥満猫での食欲不振
↓
体脂肪を分解しエネルギーとして利用
↓
遊離脂肪酸が肝臓に運ばれ代謝
↓
肝臓に脂肪が蓄積
↓
肝リピドーシス<病歴・症状>
中年齢・肥満猫
食欲は低下~廃絶(通常は1週間以上)
体重減少(25%以上減少)
黄疸・嘔吐・逆流・嗜眠・虚弱など<診断>
血液検査・超音波検査・肝臓の針生検など<治療>
点滴・栄養補給治療しない場合、ほとんどの猫が死亡します。
治療には時間がかかり、長い場合は3ヶ月以上かかることがあります。
退院後も栄養補給や投薬が必要なため、飼い主様の努力が必要になります。
しかし合併症がなく治療を継続すれば、完治できる病気です。当院にもたまに肝リピドーシスの猫ちゃんが来院されることがあります。
点滴などである程度状態を落ち着かせてから、麻酔下にて食道にチューブをいれ、そこから流動食をいれて治療をしています。
完治するまでは時間がかかるため、ある程度状態が落ち着いたら退院して、ご自宅でチューブから流動食を与えます。
最初は「流動食をいれるなんて、お家でできるかな?」ととまどってしまう飼い主様もいらっしゃいますが、ほとんどの場合はお家でもうまく栄養補給できるようになります。特に肥満の猫ちゃんが、数日間食欲がなかった場合は肝リピドーシスの可能性もありますので、お早めに来院頂ければと思います。
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肝毒性のある物質
先週は肝疾患の勉強会に参加してまいりました。
今回は血液検査で肝臓の値(肝酵素)が高値だった場合のアプローチ法、画像診断、血液検査、細胞診、病理検査、麻酔、外科、肝腫瘍の内科・治療について1日かけて講義を聴いてきました。
当院においても術前や体調不良時の血液検査などで肝臓の値が高いことがよくあります。肝酵素は毒物・薬物などで上昇することもありますのでよく問診をした後、まずは超音波検査をお勧めすることが多いです。その後、さらなる精査にすすむか、試験的治療を開始するかご相談させて頂いております。
肝毒性のある物質としてはキシリトールが有名ですが、アロマオイルやハーブ系のサプリメントも肝毒性があるそうです。ヒトにとっては毒物ではなくても、わんちゃん・ねこちゃんにとっては毒物であることもあるため、気をつけなければなりません。
【肝毒性のある物質】
ハーブ系サプリメント、アロマオイル、塩素化合物(洗剤など)、アフラトキシン(カビ毒)、ベニテングダケ、細菌毒素、ラン藻、ソテツの実、重金属(塗料の鉛など)、有機リン(殺虫剤、農薬)、タリウム(殺鼠剤)、キシリトールなど -
肝臓腫瘤の画像診断
肝臓腫瘤に対する画像診断にはX線検査、超音波検査、CT検査、MRI検査があります。
<X線検査>
腫瘤の有無・局在、肺転移の有無などを診断します。病変が大きくならないとわからないことが多いです。
<超音波検査>
腫瘤の有無、局在、内部構造、単一か多発か、他の臓器の評価、血流の評価などを行います。腫瘤の検出に関してはX線検査より優れています。
<CT検査>
腫瘤の有無、局在、内部構造、単一か多発か、他の臓器の評価、大血管との関連性の評価、手術のプランニングを行います。
CT検査は手術適応かどうかの判断や、手術のプランニングをたてるために非常に有用な検査になります。超音波検査で診断がつかない場合や今後の治療方針がたてにくい場合はお勧めすることがあります。
当院にCTはございませんので、検査をご希望される際は大学病院や画像診断センターをご紹介しております。
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肝臓切除
本日は夜から東京都内で開催されているハイパージョイントセミナーに参加してまいりました。今回は「肝臓切除」についての講義でした。
肝臓切除は、肝臓腫瘍、肝臓の生検(組織検査)などの時に実施します。肝臓腫瘍の50%以上は肝細胞癌で、そのほとんどが単発性で孤立性(病変が1箇所)といわれており、治療は主に外科手術になります。手術は腫瘍が単発・塊状で、肝内・腹腔内・遠隔転移がなく、大血管との癒着などがみられず、十分な肝予備能があり、麻酔に耐えられる体力があれば適応であるとされています。今回は主に術式についての講義でした。今まで教わってきた術式とは違い、こういった方法もあるのだな、と勉強になりました。肝臓腫瘍の症状は元気・食欲低下などの非特異的症状(肝臓腫瘍以外の病気でもみられる症状)、腹部膨満、腹水、貧血などです。腫瘍が相当大きくなってからでないと症状がでてこない事もあります。健康診断で偶然みつかることもありますので、特に中・高齢になりましたら定期的に健康診断されることをお勧めします。