感染症科 記事一覧
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CRP(炎症マーカー)が院内で測定できるようになりました
昨日は午後の診療を17時半までにさせて頂いて六本木で開催されたCRP(炎症マーカー)のセミナーに行ってきました。皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。本日はCRPについてお話し致します。
【CRP(C反応性蛋白)(炎症マーカー)】
CRPとは体内に炎症・感染・組織障害などのストレスが加わった際に上昇する蛋白になります。CRPは犬の血液で測定することができますが、猫では使用できません。CRPを測定することにより炎症の有無・程度を知ることができ、診断の補助となることもあります。
また、経時的変化をとらえることで、治療反応性や病態悪化を知ることができます。
CRPの変化や他のマーカーとの組み合わせによって予後をある程度予測することもできます。
よって日々の臨床検査でCRP測定を行う意義は極めて大きいです。
様々な疾患で増加しますが、特に感染性・免疫介在性・腫瘍性疾患での上昇が顕著です。循環器・神経・内分泌疾患ではあまり上昇しません。
【CRPの捉え方】
正常:0.7以下
軽度:0.7~3
中等度:3~7
重度:7以上
当院にも今CRPを定期的にモニターしている患者さんがいますが、今まで院内で検査ができず外注検査にだしていため結果がでるまで数日かかっていました。最近、院内の機械でCRPを測定できるようになったためその場で結果をお伝えすることができ、非常に便利になりました。
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猫の結膜炎
9月15日は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「猫の眼科疾患」についての講義に参加してまいりました。今回は猫の結膜炎についてお話させて頂きます。
【猫の結膜炎】
猫の結膜炎はウィルス又は細菌などによる感染性結膜炎が多いといわれています。
<症状>
流涙,眼瞼痙攣,結膜浮腫,結膜充血,角膜潰瘍
(結膜浮腫がひどいと閉眼できずに角膜潰瘍になってしまうパターンが多いそうです)
<原因>
③クラミジア
④マイコプラズマなど
①と②は以前お話しさせて頂いたことのある猫のカゼの代表になるウィルスです。ワクチンを接種していても完全に防御できる訳ではありませんが、接種していれば感染しても軽い症状ですむ事が多いです。
ひどいくしゃみ,咳,鼻炎などカゼ症状をおこしている猫の目をみると,同時に結膜炎になっている事が多いです。特に①猫ヘルペスウィルス感染症は一旦よくなったようにみえてもウィルスが神経節に潜伏し,ストレスなどにより再度発症することがありますので,できるだけストレスのかからない環境で飼育して頂ければと思います。
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猫のウィルス感染症(猫ウィルス性鼻気管炎・猫カリシウィルス感染症・猫汎白血球減少症・猫白血病ウィルス感染症)
昨夜は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「猫の感染症」についての講義に参加してまいりました。
今回は主に混合ワクチンに入っている以下の4つのウィルス感染症についてご説明させて頂きます。
①【猫ウィルス性鼻気管炎(FVR)】
ヘルペスウィルスによる感染症で、ひどいくしゃみ、咳、鼻炎などの呼吸器症状の他、結膜炎などをひき起こします。高熱によって食欲はなくなり鼻水と涙で顔中クシャクシャになり典型的なカゼ症状がみられます。
*感染源:感染猫の涙・唾液・鼻汁
*感染経路:接触感染・人間の手
*潜伏期:3~4日
*症状:急性のくしゃみ・眼鼻分泌液など(発症から3~4日(感染後6~8日)で症状が最高になる)細菌感染の合併がなければ急性経過で終了。終結後、神経節に潜伏しストレスなどにより発症することがある。
*診断:臨床症状
*治療:インターフェロン・抗生物質②【猫カリシウィルス感染症】
かかりはじめの症状はくしゃみ、鼻水、発熱などで、猫ウィルス性鼻気管炎に似ています。症状が進むと口の周辺に潰瘍ができることもあり、急性の肺炎を起こして死亡することもあります。
*感染源:感染猫の涙・唾液・鼻汁
*感染経路:接触感染・人間の手
*潜伏期:約3日
*症状
①上部気道型 ②潰瘍形成型 ③肺炎型 ④腸管感染型 ⑤子猫跛行症候群 ⑥流産 終結後口峡部に持続感染をおこす。
*診断:臨床症状
*治療:インターフェロン・抗生物質③【猫汎白血球減少症】
パルボウィルスによる感染症で、白血球が極端に少なくなる病気です。高熱、嘔吐、食欲不振・下痢などを引き起こします。体力のない子猫などはたった1日で死亡することもある恐ろしい病気です。
*感染源:感染猫の便
*感染経路:接触感染・人間の手・経鼻・経結膜・経口
*潜伏期:2~10日
*臨床徴候:最初の徴候は発熱(40℃以上)・白血球数は4日までに4000/μl以下に下降・嘔吐・下痢・妊娠の最後の1週または生後9週までに感染した子猫は小脳の形成不全に起因する運動失調をおこす。
*診断:臨床症状・白血球減少・抗原検査キット・PCR
*治療:インターフェロン・抗生物質④【猫白血病ウィルス感染症】
白血病やリンパ腫など血液の腫瘍、貧血、腎炎・流産などをおこします。病気に対する免疫が弱まるため、様々な病気を併発しやすくなります。感染してから発病までの期間が長く、その間は見かけ上健康にみえます。
*感染源:感染猫の血液・唾液・尿・便など。
*感染経路:猫同士の長期にわたる濃厚な接触があると感染しやすい。母子感染。
*併発しやすい病気
骨髄の腫瘍性疾患・骨髄低形成疾患・骨髄異形性症候群・リンパ系腫瘍・貧血・汎白血球減少症様症候群・雌猫の繁殖障害・神経ならびに運動器疾患・二次感染症あるいは日和見感染症・免疫介在性血球減少症・糸球体腎炎など
*診断:ELISA(院内で検査可能)
*予後:感染猫の致死率は6ヵ月間で30%、2年間で60%、4年間で90%との報告がある。3種ワクチンでは①②③を、4種ワクチンでは①②③④を予防します。
①と②は猫のカゼの代表で、ワクチンを接種しても完全に防御できる訳ではありませんが、接種していれば感染しても軽い症状ですむ事が多いです。生活環境などを考慮して、どちらのワクチンを接種するかご相談させて頂いております。