血液・骨髄疾患 記事一覧
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播種性血管内凝固(DIC)
先週は腫瘍のセミナーに参加してきました。今回のセミナーはチャリティーレクチャー といって定期的に開催されており、参加費は東日本大震災の被災地の方への義援金になるそうです。
今回はDIC(播種性血管内凝固)についてご説明いたします。
【DIC(播種性血管内凝固)】
様々な基礎疾患に合併する全身の微小血栓を特徴とする病態です。
血栓の形成による臓器不全がもっとも大きな問題となり、しばしば出血傾向が認められます。
<DICの基礎疾患>
敗血症・急性白血病・固形癌・重症感染症・ショック・産科疾患・外傷・熱傷・急性膵炎・子宮蓄膿症など
<DICの臨床症状>
2大症状は臓器症状と出血症状
①臓器症状:虚血性変化によって引き起こされる様々な症状
腎臓→血尿、乏尿、無尿
中枢神経→意識障害、局所的な神経症状
消化管→急性潰瘍による下血、腹痛
肺→肺梗塞のための呼吸困難など
②出血症状
<DICの予後>
DICと診断された犬の死亡率は54%との報告がある
DICが確定してから治療をするのでは遅すぎるといわれており、できるだけ早期にDICを診断し、基礎疾患に対する治療を行うことが大切です。 -
論文発表(小動物臨床血液学症例集(2011年10月))
2011年10月号の小動物臨床血液学症例集に投稿した論文が掲載されました。
去年の学会で発表した直後に投稿依頼がきたため、今回執筆させて頂くことになりました。
こちらの論文も書き始めてから掲載されるまで半年もかかってしまいました。今回も1つの症例をじっくり考えてまとめることによって非常に勉強になり、良い経験になりました。
獣医療は診療科目が多いので、これからも様々な分野をコツコツと勉強していき穴のない診療ができるように心がけていきたいです。
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学会発表 in 大阪 (2010年動物臨床医学会)
こんにちは。獣医師の萩原です。以前、お知らせにも告知させて頂いておりましたが、11月19日(金)~21日(日)は私の診察をお休みにさせて頂き、大阪で開催された第31回動物臨床医学会年次大会で発表してきました。
この学会は毎年大阪で開催され、今年で31回目になる歴史のある学会です。私自身、こちらの学会で発表したのは今回で3回目になります。
今回は大学病院で診ている症例を発表しました。「レフルノミドが奏効した非再生性免疫介在性貧血の犬の1例」と、舌をかみそうな題名です。「非再生性免疫介在性貧血」という病気は最近になって診断名が確立されたもので、治療や予後に関する報告が少ない珍しい病気です。
何度も練習していきましたが、やはり本番でも舌が回らず何度かつっかえてしまいました・・・でもなんとか無事終わり、安心しました。
発表が終わった日の夜は、大阪で開業している友人夫婦がもつ煮を食べに連れて行ってくれました。すごくおいしかったです。
その後、テレビでよくみる「えびす橋」に連れて行ってくれました。
有名なかに道楽の看板。リアルです。大阪は派手な看板が多いそうです。
最後、たこ焼きをごちそうになりました。
大阪の人はたこ焼きをご飯のおかずにできるそうです。ちょっとうらやましいです。
なんだかグルメ日記みたいになってしまいました。
今回、学会の準備は夏からコツコツしていたため途中までは余裕があったのですが、11月に入りかぜをひいてしまい咳がでて苦しくて夜眠れなくなったり、重症患者さんが続いたり・・・と、予想外のことがおき、いつものように直前は準備でいっぱいいっぱいになってしまいました・・・
最近では学会準備で休みの日は大学に行きスライド作りや調べ物をしていたため、ゆっくり休む日がなかったので、今は休養をとって長引いているかぜを治したいです。
学会発表は正直ストレスですが、準備段階でその病気について再度調べてより深く勉強するため、非常に自分のためになり成長できる良い機会だと思っています。今後も定期的に学会に参加し、発表できたらと思います。
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貧血
10月13日は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「貧血」のセミナーに参加してまいりました。
今回は貧血を呈するわんちゃん・ねこちゃんの症例検討で、各々のプロフィール・血液検査・血液・骨髄塗抹などを多数みることができ勉強になりました。
【貧血】
血液検査で総赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット(PCV)のいずれか、あるいは全ての低下がみられた場合を「貧血」といいます。
総赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット(PCV)は血液検査(血球計算(CBC))でわかります。
<血液検査の手順>
①採血します。
②全自動血球計数器(血球計算(CBC)の測定ができます)に血液をセットします。
③測定中
④数十秒で血球計算(WBC, RBC, Hb, Ht, MCV, MCHC, PLT)の結果がでます。
⑤血液1滴をスライドガラスにうすくのばし、乾燥・固定・染色を行います。(血液塗抹)
⑥次に血液生化学検査を行います。この機械では肝臓・腎臓パネル・血糖値など様々な項目を測定することができます。
⑦顕微鏡で赤血球・白血球・血小板の形態・数などを観察します。
<貧血の分類>
貧血の原因は様々です。大きく分類すると再生性と非再生性に分類されます。
①再生性貧血
骨髄以外の原因による破壊・喪失
a) 急性出血
体内又は体外出血
b) 溶血
赤血球膜の異常(ハインツ小体・肝疾患・脂質異常・低リンなど)
免疫介在性・感染性(バベシア・ヘモプラズマ・免疫介在性溶血性貧血など)
②非再生性貧血
骨髄での産生低下が原因
a) 比較的よくみられるもの
慢性炎症による貧血・腎性貧血・甲状腺機能低下症・白血病ウィルス感染・鉄欠乏性貧血・非再生性免疫介在性貧血など
b) 特殊な骨髄疾患によるもの:骨髄検査をしないと確定診断がつかないケースが多いです。
赤芽球癆・再生不良性貧血・骨髄癆・骨髄異形成症候群など
「貧血」のわんちゃん・ねこちゃんにおいては、「貧血」を主訴にご来院される方は本当にまれです。ほとんどの方は元気・食欲の低下などを主訴に来院され、診察時に貧血が発見されることが多いです。
身体検査のみでは貧血の程度や内臓の状態をはっきりと把握することができませんので、ご家族の方と相談の上、血液検査を行います。少量の血液を採血し、約20~30分後に結果がでます。検査結果がでた後、今後の検査や治療方針についてご相談させて頂きます。
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免疫介在性溶血性貧血 (IHA)
本日は夜から東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの免疫疾患についての講義に参加してまいりました。今回は免疫疾患の1つである免疫介在性溶血性貧血 (IHA)についてご説明させて頂こうと思います。
免疫介在性溶血性貧血 (IHA)はなんらかの原因により自己赤血球膜上の抗原に対する抗体が産生され、抗原抗体反応のために赤血球が障害を受け、血管内又は血管外溶血がおこり貧血をきたす病態です。自己免疫性溶血性貧血(AIHA)(薬物・感染・腫瘍などの原因がない場合)と続発性免疫介在性溶血性貧血(薬物性・感染性・腫瘍性などによっておこる)に分類されます。
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は中年のメスに多く、コッカースパニエル、プードル、オールドイングリッシュシープドック、シーズーなどに多いといわれています。猫では白血病ウィルスやエイズウィルスに関連しておこるものが多いといわれています。
溶血が急性で激しい場合には発熱、ヘモグロビン血症、ヘモグロビン尿、黄疸、嘔吐、脾腫、リンパ節の腫脹などがみられます。
血液検査では大球性低色素性貧血、赤血球大小不同、多染性赤血球増加などがみられ、球状赤血球、好中球増加がみられることもあります。
劇症例の致死率は80~90%ともいわれ、全般の致死率は38%といわれています。
治療は免疫抑制療法や輸血などになります。
貧血を主訴に来院される方は少なく、元気・食欲低下・嘔吐・血尿などを主訴に来院される事が多いです。人間では貧血になると顔がまっ白になってくることが多いですが、わんちゃんやねこちゃんには毛が生えていますので、貧血になっても外からではわかりにくいです。貧血の有無は可視粘膜の色でわかることが多いです。例えば、くちびるをめくって歯肉の色をみたり、結膜が白くないかを観察します。歯肉や結膜の正常な色がわかっていないと、正常より白いかどうかわかりにくいので、健康な時からよく観察してあげることが大切だと思います。【ハリー君の歯肉】
くちびるをめくって歯肉をみます。健康なピンク色です。【ハリー君の結膜】
あっかんべぇをして結膜をみます。健康なピンク色です。ハリー君の粘膜は健康なピンク色で、貧血はありません。