呼吸器疾患 記事一覧
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気管虚脱
先週は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの呼吸器疾患についての講義に参加してまいりました。今回は気管虚脱についてについてお話し致します。
【気管虚脱】
<定義>
気管内径が背腹方向に極端に虚脱している状態<症状>
乾性の咳・炎症や感染症を併発すれば湿性の咳・運動不耐性・喘鳴音・奇異呼吸・呼気性雑音・チアノーゼ・失神・食欲元気消失・不眠症・高体温・肝腫大など
<治療>
①内科療法:緩和目的
鎮咳薬・鎮静療法・抗炎症療法など
刺激物やアレルゲンの吸入を避ける
悪化する可能性のある要因(興奮・ストレス・環境温湿度)を最小限にする
運動制限・体重コントロール・定期的な歯科ケア・脱水予防・加湿器・伝染性気管気管支炎の予防気管虚脱は吸気時(息を吸った時)と呼気時(息を吐いた時)のX線をとらないと病変が検出されないことがあります。よって、咳がでた際は気管虚脱を除外するために吸気時と呼気時のX線を撮影することをお勧めしています。
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喉頭麻痺
先日は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの呼吸器疾患についての講義を受けました。本日は喉頭麻痺についてお話し致します。
【喉頭麻痺】
<好発犬種>
①未成熟犬
シベリアン・ハスキー・ダルメシアン・コッカースパニエル・ダックスフンド・ミニチュア・ピンシャーなど②老齢犬(好発年齢9.5~12.2歳)
ラブラドール・レトリーバー・セントバーナード・アフガンハウンドなど
<原因>
①先天性
②後天性
ほとんどが特発性(原因不明)
他、腫瘍、外傷、感染症、全身性の末梢性神経障害など
<臨床徴候>
発声の質または音量の変化
吸気性雑音、運動不耐性、肺水腫、チアノーゼ、発咳、高体温、呼吸困難、失神など
<治療>
①内科療法
緩和目的
興奮・低酸素症→酸素吸入+鎮静療法
高体温→体を冷やす
咽喉頭部の炎症病変→抗炎症剤私も以前、喉頭麻痺の症例を診たことがありますが、息をうまく吸えず苦しそうで、すぐ高体温になってしまい本当に辛そうでした。まれな病気ですが、呼吸困難時の鑑別診断の1つになりますので各種検査をして除外しなければなりません。
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骨のX線検査
先日は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズ の「骨・関節のX線検査」についての講義に参加してまいりました。
X線写真は以下の5種類の物質の濃淡の差によって読影します。
①が一番白くみえ、⑤にいくにつれ黒くうつります。
①金属
②骨または鉱質
③液体
④脂肪
⑤ガス(空気)
【わんちゃんの胸部X線】
①金属(マイクロチップと首輪の金属)が一番白くうつっています。
②骨→③液体(心臓)→⑤空気(肺)の順に黒くうつります。
【太ったねこちゃんの腹部X線検査】
太ったねこちゃんでは肝臓の下に④脂肪がよくみえます。
今回の講義でも知らないことが多々あり、とても勉強になりました。
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リンパ形質細胞性鼻炎
先週はオンラインセミナーでミニチュア・ダックスフンドに多い病気である「リンパ形質細胞性鼻炎」についての講義をうけました。
【リンパ形質細胞性鼻炎】
<病因>
吸引性の刺激物質・アレルゲン・免疫介在性などが疑われていますが、明確な原因は不明。
<好発>
若齢から中年齢の小型動物。猫よりも犬が多い。ウィペットやダックスフンドに多い。
<臨床症状>
くしゃみ・逆くしゃみ・鼻をならす
透明な漿液性または粘液性の鼻汁(主に両側性)
二次感染が起こると膿瘍粘液性
ひどい鼻出血はみられないが、鼻汁が血様になることはある
過度の後鼻漏があると誤嚥して咳や肺炎をおこすことがある
<診断>
CT・MRI検査にて他疾患の除外
確定診断は内視鏡検査にて鼻腔粘膜の生検
<治療>
内科療法(ステロイド・免疫抑制剤・抗生物質・ネブライザーなど)
今回講義をされた先生が経験している症例のうち99%がロングヘアーのミニチュア・ダックスフンドだそうです。特に7歳以上のロングヘアーのミニチュアダックスフンドの子でなかなか鼻汁がとまらない場合はこの病気である可能性も考えられます。まずは他疾患の除外が必要になりますのでお早めにご来院ください。
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聴診
5月26日(木)は以前、告知しましたように、診察を午後6時までに短縮して院長と二人で日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「聴診」についての講義に参加してまいりました。
【聴診】
私たちは診察時必ずといっていいほど聴診器で聴診しますが、主に心音と呼吸音を聴いています。
心音は特に①心拍数②リズム(不整脈の有無)③雑音の有無に注意して聴診します。
呼吸音は特に呼吸数とラッセル音(肺炎や肺水腫など呼吸器疾患の時にでる音)に注意して聴診します。
当院にある聴診器をいろいろ集めてみましたのでご紹介致します。
【リットマンクラシックⅡ S.E.(一般診療用聴診器)】
最も一般的な聴診器で、私が学生の時に購入しました。
学生や新人獣医師はまずこの聴診器を購入する人が多いです。
「リットマン」とは獣医の中で最も人気がある海外メーカーの名前になります。
チューブには様々な色があります。
【リットマンカーディオロジーS.T.C.】
こちらは心臓病診療に特化した聴診器です。
【ステレオ・フォネット】
国産のステレオ聴診器になります。私が勤務医3年目の時に購入しました。当初、聴診に自信がなく悩んでいたところ、この聴診器を勧められました。驚くほど心雑音や呼吸音が大きく立体的に聴こえる素晴らしい聴診器です。
チェストピース(動物の体にあてる部分)が2つにわかれていることによって、音をステレオで聴取でき、左右の耳に別々に聞こえるのです。
今回、講演した先生の大学病院に、心雑音を主訴に紹介された症例の8割は心雑音がないそうです。すなわち、心雑音がないにも関わらず、心雑音があると誤診してしまう獣医が非常に多いそうです。このような誤診をしないように、日々聴診を鍛えなければならないなと思いました。
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胸部レントゲン検査
5月11日(水)は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「胸部レントゲン検査」についての講義に参加してまいりました。
【胸部レントゲン検査】
以前にもお話ししましたが、
★レントゲン検査では、液体・骨は白く、空気は黒くうつります
よって心臓は血液が溜まっているため白くうつります。
肺は空気が入っているため黒くうつります。
【正常猫のレントゲン】
肺はわんちゃん・ねこちゃんともに下図のように
①左前葉前部
②左前葉後部
③左後葉
④右前葉
⑤右中葉
⑥右後葉
⑦副葉
の合計7葉にわかれています。
(ちなみに牛は8葉、豚は7葉、馬は5葉になります)
レントゲンでみると、このようになります。
*ラテラル像(横向き)
*VD像(仰向け)
このように、各肺葉の位置を考えながらレントゲンを読影します。
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胸水・胸腔内腫瘍の画像診断(レントゲン・超音波診断)
2月16日は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「リンパ節、胸腔、腹腔の超音波診断、超音波ガイド下生検」についての講義に院長と参加してまいりました。今回は胸水・胸腔内腫瘍の画像診断(レントゲン・超音波診断)についてお話させて頂きます。
【胸水・胸腔内腫瘍の画像診断(レントゲン・超音波診断)】
★レントゲン検査→液体は白く空気は黒くうつります。
★超音波検査(エコー検査)→液体は黒くうつりますが、空気はよくうつりません。肺は酸素を交換するところで空気がたくさんある臓器なので、基本的にはよくうつらない臓器になります。しかし、胸腔内に液体が溜まっていると液体が黒くうつるため、肺や胸腔内の腫瘍などがよくみえるようになります。
【実際の症例】
★正常猫★
<胸部レントゲン検査>
心臓は血液が溜まっているため白くうつります。肺は空気が入っているため黒くうつります。
★胸水が貯留している猫★
<胸部レントゲン検査>
レントゲンで黒いはずの肺が白くうつっています。このような時は胸腔内に水が溜まっている(胸水)か、腫瘍の存在を疑います。
<超音波(エコー)検査>
胸水が貯留している時は、より詳しい精査のために胸腔の超音波検査を行います。エコーでは液体は黒くうつるので胸水は黒くうつります。超音波検査では、胸水貯留の程度や場所、腫瘍の有無などを確認します。
腫瘍がみつかりました。
超音波下で針生検したところ、「縦隔型リンパ腫」という悪性腫瘍でした。
★胸腔内に腫瘍がある猫★
<胸部レントゲン検査>
心臓の頭側に腫瘍が存在しています。
<超音波(エコー)検査>
超音波検査では内部に嚢胞を含んでいることがわかります。
超音波下で針生検したところ、胸腺腫疑いでした。
胸腔内のしこりや胸水の生検は超音波下で行うとより安全に行うことができます。画像診断(レントゲン・エコー)のみではしこりの診断名はつかないため、まずは針生検をお勧めしています。
ここ1年、胸水が貯留していたり、胸腔内に腫瘍がある子が立て続けに来院なさいました。呼吸困難に陥っている子が多いため、興奮させないように慎重に検査を行わなければなりません。
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ネブライザー
こんにちは。獣医師の萩原です。11月17日(日)は診察終了後、院長と呼吸器病のセミナーに参加してまいりました。講師はイギリスの先生で、様々な呼吸器病の症例をみることができ非常に勉強になりました。
今回は呼吸器病の治療に用いる「ネブライザー」という機械についてご説明させて頂きます。
【ネブライザー】
水や薬液を霧状に変え、気道内の加湿や薬液投与のために用いる吸入器具です。主に呼吸器病の治療時に用います。
今回の患者さんは、柴犬の小太郎ちゃんです。まだお家に来たばかりですが、だいぶ慣れてきてお家の猫ちゃんたちを追いかけ回しているそうです。咳が続くため、当院を受診されました。ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)と診断し、治療を開始致しました。
【小太郎ちゃん(柴犬・男の子・2ヵ月齢)】
座り方がかわいいです。大人しく座っていましたが、お家ではすごくやんちゃだそうです。
毛がふかふかです。
薬液(抗生剤・気管支拡張剤など)と生理食塩水を用意します。
これらをネブライザーにいれて、セット完了です。
ホースの先から霧状の水分と薬液がでてきます。
くんくん
少し楽になったかな?
今ではだいぶ咳も落ち着いたようです。
私も数日前からカゼをひいてしまいました。喉が痛くて咳がでて声もガラガラです。私も今日からネブライザーを開始しました。ネブライザーをした後は喉がすっきりして気持ちがよいです。
咳などの呼吸器症状がみられた場合は、ネブライザー療法でだいぶ呼吸が楽になるかもしれないので、一度ご相談ください。
2010年11月11日(木) 投稿者 hagiwara | 勉強会, 呼吸器疾患, 機器紹介, 治療例, 立川市マミー動物病院・設備
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猫のフィラリア症
本日は猫のフィラリア症についての院内セミナーを開きました。
フィラリアはわんちゃんの病気としてよく知られていますが、猫ちゃんにも感染します。呼吸困難、咳や嘔吐が主な症状で、放置すると突然死を引き起こすこともあります。わんちゃんのように診断や治療が確立されていないので、予防が重要です。蚊が媒介するので、室内飼いの猫ちゃんも油断できません。
今回のセミナーで一番驚いたことは、1997年の報告では日本の猫ちゃんの12%がフィラリアに感染しているそうです。
一番の予防方法は蚊に刺されないことですが、ふつうの生活で全く蚊に刺されないことは困難です。当院では猫ちゃんのフィラリア予防薬を揃えておりますので、猫ちゃんを飼われている方は、ぜひご相談ください。
予防期間は毎年5月~12月になります。