消化器疾患 記事一覧
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膵炎
先週は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズに参加し、肝外胆道系疾患と膵外分泌疾患について勉強してまいりました。
本日は膵外分泌疾患の1つである膵炎についてお話しいたします。
【膵炎】
膵炎の症状は以下のようになります。<犬>
食欲不振 91% 嘔吐 90% 衰弱 79% 腹痛 58% 脱水 97% 下痢 33% 発熱 32% 黄疸 26% <猫>
元気消失 100% 食欲不振 84% 重度の脱水 77% 低体温 68% 嘔吐 35% 腹痛 25% 腹部マス 23% 下痢 15% 以上のように、病院に来院される体調が悪いわんちゃん・ねこちゃんによくある症状のため、症状だけでは診断ができません。診断には検査が必要になります。
昔は膵炎は血液検査でわかりにくかったため診断するのが難しかったのですが、今はわんちゃん・ねこちゃんにも膵炎のマーカーができたため、診断する機会が増えました。
また、膵炎のマーカーは少し前までは外注検査でしかできませんでしたが、今はある程度信頼できるマーカーが院内でも測定できるようになったため、検査しやすくなりました。
上記症状がある子では当院でも膵炎のマーカーを検査することがありますが、検査してみると膵炎に罹患している子が多いことがわかります。
ただ、膵炎だけではなく他の病気も併発している可能性もあるため、他の検査も同時にお勧めすることが多いです。
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肝リピドーシス
先日は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズに参加し、犬と猫の代表的な肝疾患について勉強してまいりました。
本日は肝リピドーシスについてご説明いたします。
【肝リピドーシス】
肝細胞への過剰な脂肪蓄積によりおこる肝機能障害
中年齢の肥満猫に多い肥満猫での食欲不振
↓
体脂肪を分解しエネルギーとして利用
↓
遊離脂肪酸が肝臓に運ばれ代謝
↓
肝臓に脂肪が蓄積
↓
肝リピドーシス<病歴・症状>
中年齢・肥満猫
食欲は低下~廃絶(通常は1週間以上)
体重減少(25%以上減少)
黄疸・嘔吐・逆流・嗜眠・虚弱など<診断>
血液検査・超音波検査・肝臓の針生検など<治療>
点滴・栄養補給治療しない場合、ほとんどの猫が死亡します。
治療には時間がかかり、長い場合は3ヶ月以上かかることがあります。
退院後も栄養補給や投薬が必要なため、飼い主様の努力が必要になります。
しかし合併症がなく治療を継続すれば、完治できる病気です。当院にもたまに肝リピドーシスの猫ちゃんが来院されることがあります。
点滴などである程度状態を落ち着かせてから、麻酔下にて食道にチューブをいれ、そこから流動食をいれて治療をしています。
完治するまでは時間がかかるため、ある程度状態が落ち着いたら退院して、ご自宅でチューブから流動食を与えます。
最初は「流動食をいれるなんて、お家でできるかな?」ととまどってしまう飼い主様もいらっしゃいますが、ほとんどの場合はお家でもうまく栄養補給できるようになります。特に肥満の猫ちゃんが、数日間食欲がなかった場合は肝リピドーシスの可能性もありますので、お早めに来院頂ければと思います。
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肝毒性のある物質
先週は肝疾患の勉強会に参加してまいりました。
今回は血液検査で肝臓の値(肝酵素)が高値だった場合のアプローチ法、画像診断、血液検査、細胞診、病理検査、麻酔、外科、肝腫瘍の内科・治療について1日かけて講義を聴いてきました。
当院においても術前や体調不良時の血液検査などで肝臓の値が高いことがよくあります。肝酵素は毒物・薬物などで上昇することもありますのでよく問診をした後、まずは超音波検査をお勧めすることが多いです。その後、さらなる精査にすすむか、試験的治療を開始するかご相談させて頂いております。
肝毒性のある物質としてはキシリトールが有名ですが、アロマオイルやハーブ系のサプリメントも肝毒性があるそうです。ヒトにとっては毒物ではなくても、わんちゃん・ねこちゃんにとっては毒物であることもあるため、気をつけなければなりません。
【肝毒性のある物質】
ハーブ系サプリメント、アロマオイル、塩素化合物(洗剤など)、アフラトキシン(カビ毒)、ベニテングダケ、細菌毒素、ラン藻、ソテツの実、重金属(塗料の鉛など)、有機リン(殺虫剤、農薬)、タリウム(殺鼠剤)、キシリトールなど -
消化器内科のセミナーに参加してまいりました
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腹部超音波実習(胆道系・膵臓)に参加してまいりました
2月1日(日)は獣医イメージングサポートが主催している腹部超音波実習に院長と一緒に参加してまいりました。
今回の内容は胆道系と膵臓でした。特に膵臓は描出が難しい臓器で、今までも他の先生に描出方法を習ったことがあるのですが、今回は違う描出方法を習うことができてよかったです。
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消化器内科のセミナーに参加してまいりました
1月18日(日)は診察終了後、消化器内科のセミナーに参加してまいりました。今回は特に嘔吐の診断・治療について詳しいお話しを聞くことができて勉強になりました。最近、嘔吐・下痢などの消化器症状を呈するわんちゃん、ねこちゃんが多いため日々の診療に生かしたいと思います。
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腹部超音波実習(消化管)に参加してまいりました
12月7日(日)は獣医イメージングサポートが主催している腹部超音波実習に院長と一緒に参加してまいりました。
こちらの実習は6回シリーズになっておりますが、以前他の腹部超音波実習に参加したことがあるため6回全ては参加せず、今後はより勉強したい臓器のみ参加する予定です。
今回の内容は消化管(胃・腸)でした。消化管は食べ物や便などによって超音波で確認しにくいこともありますが、レントゲンではわからない異常を発見できることがあります。特に消化器症状(嘔吐・下痢など)や食欲不振・削痩などの症状がみられる子には検査をお勧めしております。
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胆泥症と胆嚢粘液嚢腫のセミナーに参加してまいりました
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内視鏡による胃内異物摘出術
5ヵ月齢のわんちゃんが肉団子を串ごと食べてしまったとの主訴で来院されました。
まずはX線造影検査を行ったところ、胃内に串が残存していることが疑われました。
X線検査にて異物はうつることもありますが、うつらないこともあります。
このまま胃内に竹串が残ったままだと胃潰瘍・胃穿孔をおこし命に関わることもあるため、飼い主様と相談した結果、まずは内視鏡による異物摘出を試みたところ、胃内に竹串がみられました。
胃粘膜には発赤・出血痕がみられ、竹串が胃粘膜を刺激してしまった可能性が考えられました。
内視鏡によって食道内・胃内異物を手術せずに摘出できることがあります。摘出できない場合は手術が必要になります。
当院では異物を食べてしまった子に対しては、吐かせることができる異物の場合、催吐処置をすることがありますが、尖がったものなど吐かせることができない異物の場合はまずは内視鏡にて摘出を試みて、摘出が難しいようでしたら飼い主様と手術を行うか相談しております。
今回のように尖がった物質は催吐させることによって食道を穿孔させてしまう可能性があるため催吐処置をすることはできません。内視鏡または外科手術が第一選択となります。
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消化器型リンパ腫
先日は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの消化器型リンパ腫についての講義に参加してまいりました。
【猫の消化器型リンパ腫】
猫で一般的な消化管腫瘍
猫の消化管腫瘍の55%がリンパ腫
猫のリンパ腫の34%が消化器型リンパ腫
<臨床徴候>
下痢・嘔吐・体重減少・活動性低下・食欲低下・腹水・黄疸など
臨床徴候は非特異的です。
<病理組織学的検査・細胞診による分類>
リンパ腫と診断した場合、下記の3つに分類します。
型により治療方法・治療反応・予後が異なります。①大細胞性(=High/Intermediate-Grade・高悪性度・低分化型)
②小細胞性(=Low-Grade・低悪性度・高分化型)
③大顆粒型(=Large granular lymphocyte)<化学療法と反応性>
①大細胞性 ②小細胞性 ③大顆粒型 化学療法プロトコル 多剤併用 CHOP-based
プレドニゾロン +クロラムブシル
多剤併用 CHOP-based
完全寛解(CR)率 38~87% 56~96% 5% CRの症例の生存期間中央値 7~10ヵ月 19~29ヵ月 17日 消化器型リンパ腫はお腹の中の腫瘍のため外からはわかりにくく、診断は超音波検査や内視鏡検査で行います。特に高齢の猫ちゃんで上記症状がみられた場合には消化器型リンパ腫も疑い各種検査をされることをお勧めしております。
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蛋白漏出性腸症
先日は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの蛋白漏出性腸症についての講義に参加してまいりました。
【蛋白漏出性腸症】
何らかの基礎疾患によって蛋白が腸粘膜から腸管腔に漏出し、血液検査にて低蛋白血症がみられる病態です。
<主な基礎疾患>
腸リンパ管拡張症・炎症性腸疾患(IBD)・消化管腫瘍・重度の消化管寄生虫・真菌感染(国内はまれ)・腸重責・パルボウィルス性腸炎・胃潰瘍からの出血など
<臨床症状>
下痢・嘔吐・体重減少・腹水・胸水・皮下浮腫・発作・血栓塞栓症など
<診断>
まず低蛋白血症を引き起こす他疾患を除外します。
他疾患として、蛋白喪失性腎症・肝不全・重度の皮膚欠損・重度の出血・胸・腹膜炎・飢餓・低栄養・膵外分泌不全・アジソン病・若齢動物などがあげられます。
上記疾患を除外し、糞便検査・血液検査・内視鏡検査などにより蛋白漏出性腸症の原因疾患を確定します。
上記のように低蛋白血症になる病気は多数あるため、診断のためには多くの検査が必要になりますが、1つ1つ除外していくことが大切です。
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炎症性腸疾患(IBD)
1月13日(日)はお休みを頂いて、東京大学で開催された消化器疾患のセミナーに参加してまいりました。本日は炎症性腸疾患(IBD)についてご説明致します。
【炎症性腸疾患(IBD)】
慢性再発性の嘔吐や下痢がみられる場合の多くは炎症性腸疾患(IBD)と呼ばれる疾患によります。最近ではこれを慢性腸症と呼ぶようになり、食事療法で反応するものを食事反応性疾患(FRD)、抗生剤療法で反応するものを抗生剤反応性下痢症(ARD)に細分類し、これらに反応せず免疫抑制剤などの投与が必要なものをIBDと分類するようになりました。
<IBDを疑う場合>
①3週間を超えて持続する嘔吐・下痢をはじめとする胃腸症状がある
②駆虫剤や抗生剤、粘膜保護剤などの対症療法では改善しない
③他に胃・小腸・結腸の炎症の原因が確認できない
④組織学的には炎症細胞の浸潤を特徴とする。
<診断>
小腸のIBD→食欲不振・嘔吐・体重減少・黒色便(メレナ)など
大腸のIBD→大腸性の下痢(排便回数の増加・鮮血便や粘液便の排泄・しぶりなど)
糞便検査で寄生虫卵や原虫などが検出できない
内視鏡検査・生検にて炎症細胞浸潤を確認し、食事や寄生虫感染に対する除外診断を行う
今回のセミナーでは新しい食事療法に関する知見があり勉強になりました。
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胆汁嘔吐症候群
先日は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの胃の疾患についての講義に参加してまいりました。今回は胆汁嘔吐症候群についてについてお話し致します。
【胆汁嘔吐症候群】
長時間の空腹によって腸液(胆汁)が十二指腸から胃へ逆流し嘔吐がみられることを胆汁嘔吐症候群と呼びます。腸液(胆汁)によって胃粘膜が障害を受けることがあります。
<症状>
典型的には朝1回の食事の犬で、夜間から朝に胆汁まじりの液体を嘔吐。嘔吐以外に症状なし。
<診断>
症状と他の疾患の除外。特に慢性胃炎や消化管外疾患。
<治療>
食事を2~3回に増やし、空腹時間を短縮。良化しなければ胃運動改善薬を投与。それでも改善しなければ基礎疾患を考慮。
よくわんちゃんの飼い主様から夜~朝方にかけて黄色の液体(胆汁)を吐くというご相談を受けることがあります。その場合は胆汁嘔吐症候群を疑い、夜寝る前にフードを与えて頂くことによって改善することがあります。
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腸閉塞(腸内異物)
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腸リンパ管拡張症
先日は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの慢性下痢の治療についての講義に参加してまいりました。
今回は腸リンパ管拡張症についてについてお話し致します。
【腸リンパ管拡張症】
腸リンパ管拡張症は腸粘膜、粘膜下織、腸間膜のリンパ管の異常な拡張を呈した病態
犬の蛋白喪失性腸症の主な原疾患の1つ
<症状>
下痢・削痩・腹水貯留・低アルブミン血症など
消化器症状を全く認めない場合もある
<分類>
原発性:腸リンパ管の形成不全・リンパ管炎・粘膜の炎症など
ヨーキー・マルチーズなどに多い
二次性:リンパ流の障害・静脈圧上昇など
<診断>
他疾患の除外
確定診断は内視鏡検査における小腸粘膜の白色粟粒性病変と病理組織学的検査<予後>
長期予後に関するデータは乏しいが、症例によって様々
初期治療に良好に反応する場合は予後がよいことが多い
長期的な治療が必要
この病気は消化器疾患の1つですが、消化器症状を一切認めず、血液検査でしか異常値を認めないことがありますので注意が必要です。
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食事反応性腸症
先日は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの慢性下痢についての講義に参加してまいりました。今回は食事反応性腸症についてについてお話し致します。
【食事反応性腸症】
慢性腸症の症例で食事療法に反応するものをまとめてこう呼ぶ
食物アレルギー、食物不耐性などを含むが鑑別は難しい
年齢:若齢で多いが中高齢で発症することもある
症状:大腸性下痢・小腸性下痢、嘔吐など。全身状態、食欲は正常なことが多い。
<診断>
診断的治療
低アレルギー処方食などを2週間試す
→食事反応性腸症なら2週間以内に便が良化傾向
→全く良化しないまたは悪化した場合は中止
→別の処方食を試す
どの処方食が適しているかは個々の症例によって異なる
症状が良化してきたら、完全に消失するか経過観察
長期間下痢が続く子に対し食事を変更しただけで改善することがしばしばあります。もちろん食事に全く反応しない子もいますが、反応すれば体に負担なく続けることができるので試してみる価値はあると思います。
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糞便検査
先日は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの慢性下痢についての講義に参加してまいりました。今回は糞便検査についてお話し致します。
【糞便検査】
糞便検査は下痢などの腸疾患の診断に有益な検査で、肉眼検査、顕微鏡検査、遺伝子検査などがあります。
<肉眼検査>
糞便量、固さ、色、臭気、粘液付着、血液成分の混入・付着、寄生虫の有無などを確認します。
<顕微鏡検査(直接法+浮遊法)>
寄生虫、細菌、赤血球、白血球、細胞、未消化物の有無などを確認します。
下痢・軟便がみられた時はまずは人差し指の頭大の新鮮便をご持参頂ければと思います。
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肝臓腫瘤の画像診断
肝臓腫瘤に対する画像診断にはX線検査、超音波検査、CT検査、MRI検査があります。
<X線検査>
腫瘤の有無・局在、肺転移の有無などを診断します。病変が大きくならないとわからないことが多いです。
<超音波検査>
腫瘤の有無、局在、内部構造、単一か多発か、他の臓器の評価、血流の評価などを行います。腫瘤の検出に関してはX線検査より優れています。
<CT検査>
腫瘤の有無、局在、内部構造、単一か多発か、他の臓器の評価、大血管との関連性の評価、手術のプランニングを行います。
CT検査は手術適応かどうかの判断や、手術のプランニングをたてるために非常に有用な検査になります。超音波検査で診断がつかない場合や今後の治療方針がたてにくい場合はお勧めすることがあります。
当院にCTはございませんので、検査をご希望される際は大学病院や画像診断センターをご紹介しております。
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腸鉗子
先週は東京都内で開催されているハイパージョイントセミナーの「腸の手術」についての講義に参加してまいりました。
セミナーの途中で「腸鉗子」という器具が紹介されました。腸鉗子とは腸を切除する際に消化管内容物が外にもれないようにおさえる器具になります。
【腸鉗子】
腸を切除する際は2本の腸鉗子で腸をはさんでから行います。当院にも腸鉗子はありましたが、さらに良さそうだったので購入しました。
1時間指をはさみ続けても痛くない腸鉗子がよいそうで、腸をやさしくとめることができます。指をはさんでもあまり痛くありません。
手術器具は高価なものが多いですが、良い買い物ができました。
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感染性下痢におけるPCR検査(遺伝子検査)
本日は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズ の「消化器病」についての講義に参加してまいりました。
本日は感染性下痢におけるPCR検査(遺伝子検査)についてご説明致します。【感染性下痢におけるPCR検査(遺伝子検査)】
下痢の原因は、感染性(細菌・原虫・寄生虫・ウィルスなど)・食事性・炎症性腸疾患・腫瘍性・膵外分泌不全・ストレスなど多岐にわたります。
なかでも感染性下痢はよくみられますが、今まで迅速かつ正確性が高くお手頃な料金で利用できる検査はありませんでした。IDEXX RealPCRの下痢パネルはリアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)(遺伝子検査)を利用しており、ひとつの検体から犬で7種類、猫では8種類のもっともよく見られる病原体を検出することができます。ウイルス・細菌・原虫など異なる種類の病原体を一度に検査できることも大きなメリットです。
<以下の症状がでている子にお勧めします>
①頻回の水様便が認められる
②下痢・嘔吐
③便に血液や粘液,未消化のフードが混ざっている犬下痢パネルを実施した検体では、7種類のうち1つ以上の病原体が陽性だったものは62%,猫下痢パネルを実施した検体では、8種類のうち1つ以上の病原体が陽性だったものは63%でした。
以下の表は、IDEXX RealPCRにおける発生頻度を示したものです。 (IDEXX Laboratories Inc.で8週間の間に受けつけた検体で、それぞれの病原体について発生頻度を算出)
<犬下痢パネル>
1. C. perfringens Enterotoxin A(クロストリジウム・エンテロトキシン) 44.7%
2. 犬腸管コロナウイルス 14.4%
3. Giardia sp.(ジアルジア) 9.1%
4. Cryptosporidium sp.(クリプトスポリジウム) 8.7%
5. 犬パルボウイルス 26.3%
6. 犬ジステンパーウイルス 2.9%
7. Salmonella sp.(サルモネラ) 0.5%<猫下痢パネル>
1. 猫コロナウイルス 46.2%
2. C. perfringens Enterotoxin A(クロストリジウム・エンテロトキシン) 31.6%
3. Tritrichomonas foetus(トリコモナス) 12.0%
4. 猫汎白血球減少症ウイルス 6.0%
5. Cryptosporidium sp.(クリプトスポリジウム) 5.1%
6. Giardia sp.(ジアルジア) 4.3%
7. Toxoplasma gondii(トキソプラズマ) 1.7%
8. Salmonella sp.(サルモネラ) 0.5%この検査がでる前までは、各々の感染症を別々に検査しなければならなかったため、全部調べるとなると相当手間と時間がかかりました。
感染性下痢の原因をまとめて・正確に・比較的安価に調べることができ、便利になったなと思います。 -
犬のキシリトール中毒
昨日は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズ の「肝疾患の治療とモニター」についての講義に参加してまいりました。
今回は肝不全の原因となるキシリトールについてお話させて頂きます。
【犬のキシリトール中毒】
キシリトールは砂糖不使用のガムや歯磨きなどに含有されている甘味料です。ヒトはキシリトールを摂取しても無害ですが、犬では命にかかわるような中毒をひき起こすことがあるといわれています。
体重10kgのワンちゃんが、1g摂取すると低血糖になり、5g摂取すると急性肝不全になるリスクがあるため、1~5g摂取した場合には入院下でモニタリングが必要になり、5g以上摂取した場合には入院治療が必要になるといわれています。
大きいボトルに入ったガムが販売されるようになってから、ワンちゃんのキシリトール中毒が増えたそうです。150g入りの大きいボトルに入ったガムの中には64.3gのキシリトールが含まれているといわれています。よって、ワンちゃんがいたずらしてボトル1本分のガムを食べてしまった場合かなり危険です。万が一、摂取してしまった場合は、どのくらい摂取したかを確認してから病院にご来院ください。
だいぶ減ってはきましたが、今でもキシリトール入りのガムがワンちゃん用に販売されています。ヒトではキシリトールの摂取によって虫歯ができにくくなるといわれておりますが、犬はヒトとは違い虫歯は極めて少なく、キシリトールを積極的に摂取した方がよいとは思えません。
ワンちゃんはヒトとは違い虫歯は極めてまれですが、歯周病は多いので歯磨きを心がけましょう。
歯磨きの方法はビルバック社のホームページ・大澤さんが書いたブログをご覧下さい。
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吐出と嘔吐
2月6日(日)は診察終了後、院長と横浜の勉強会に行ってまいりました。横浜までは片道2時間もかかり、移動ですっかり疲れてしまいました。
講義は内科と外科が1時間半ずつで、内科は消化器疾患についてのお話でした。今回は吐出と嘔吐についてご説明させて頂きます。
【吐出と嘔吐について】
*吐出
胃に到達する以前の食物が逆流して吐き出されること。
→食道に異常がみられることが多いです。(ただし胃腸の異常による嘔吐の後、二次的に食道炎になり、吐出がおこることもあります。)
*嘔吐
胃・十二指腸の内容物が口から吐き出されること。
→胃・十二指腸以降に異常がみられることが多いです。
吐出
嘔吐
吐物の内容
食べたもの
食物および胃液(±胆汁)
消化の程度
未消化物
一部消化~消化
吐物のpH
>4
<3
食後の経過時間
食後まもなく
様々
異常部位
咽喉頭・食道に多い
胃・十二指腸以降
上の表をみれば吐出か嘔吐か簡単に区別がつきそうですが、実際なかなか区別しにくいことも多く、同時におこっていることもあります。
吐いてしまった時は、食後すぐなのか、食べたものなのか、胃液は混ざっていないか、胆汁(黄色です)は混ざっていないかなどを確認して頂くことが大切です。万が一、吐いてしまった時は、吐物をお持ち頂ければ何かわかるかもしれません。
【下からみたハリー君】
いつも口があいてます。
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消化管・膵臓の超音波診断
9月29日は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「消化管・膵臓の超音波診断」についての講義に参加してまいりました。
以前も消化管(胃・腸)・膵臓の超音波検査についてお話させて頂いた事がありますが、嘔吐・下痢などの消化器疾患の診断では画像診断が非常に重要になります。
私も以前は「消化管はガスを多量に含んでいるため、超音波でみてもよくわからない」という先入観がありましたが、絶食をしてもらい、性能の良い超音波診断装置を用いることによって、X線や内視鏡検査では得られない消化管壁の厚さや消化管の運動性、他臓器の異常などを確認できるようになりました。
【当院の超音波診断装置】
第1診察室にあります。検査前にお腹の毛を悌毛することをお勧めしております。(お腹の中の臓器が断然みやすくなります)
嘔吐や下痢などの消化器症状が続くわんちゃん・ねこちゃんは、超音波検査を受けることをお勧めしております。
最近寒くなってきましたが、ハリー君は今日も快便です。
私はストレス・食べ過ぎですぐにお腹をこわすので、ハリー君がうらやましいです。
2010年10月05日(火) 投稿者 hagiwara | 勉強会, 消化器疾患, 画像診断, 立川市マミー動物病院・設備
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難治性下痢
こんにちは。獣医師の萩原です。5月23日(日)は診察が終わってから「難治性下痢」についての勉強会に参加してまいりました。
下痢はわんちゃん・ねこちゃんともに来院理由として最も多い病気の1つです。
一般的に下痢をしている子全員に多くの検査が必要になるわけではありません。対症療法(止瀉剤・整腸剤・抗菌薬など)で短期間のうちに症状が消失すれば必ずしも精査は必要ではありません。実際、下痢で来院されるほとんどの子は対症療法で治ることが多いです。
しかし、対症療法を行っても下痢が完全に良化せず慢性化してしまった場合(3週間以上)には、慢性疾患が存在する可能性があるため精査を考慮します。また下痢以外の症状(体重減少・食欲低下・嘔吐など)が重度に認められる場合には時間的な余裕があまりないと考え、精査を急ぎます。
今回は慢性下痢の原因として多い疾患(細菌性腸炎・消化器型リンパ腫・リンパ管拡張症・大腸炎症性ポリープ・炎症性腸疾患・過敏性腸症候群など)の診断・治療法についての講義を聴き、新たな発見があり勉強になりました。
【実家の愛犬ゴンちゃん(12歳・柴犬】】
ゴンちゃんも今まで何度か下痢をしたことがありますが、全て対症療法で良くなりました。私も獣医師になりたての頃、原因不明の下痢が約1ヵ月間続き、8kgくらい痩せたことがあります。精査をしましたが、特に異常はみられず、過敏性腸症候群(ストレス)ではないかと言われました。(その後すぐにリバウンドで太ってしまい、以前より体重は重くなってしまいました・・・)
わんちゃん・ねこちゃんもストレスで下痢をすることがあります。下痢をした時にはまずは何かストレスになること(環境・気温・食事の変化など)がなかったか思い返して頂ければと思います。