泌尿器疾患 記事一覧
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腎不全
現在、私が担当しているわんちゃん・ねこちゃんには腎臓病の子が多く、少しでも知識をアップデートしたいと思ったため、先日は腎臓病のセミナーに参加してまいりました。
【腎不全】
腎機能が低下した状態で、尿毒症徴候がある場合を「腎不全」といいます。
(尿毒症徴候がない場合は「腎機能不全」といいます。)<尿毒症徴候とは> 下記のように様々な症状があります。
*消化器系:食欲不振・嘔吐・体重低下・潰瘍
*泌尿器系:無~乏尿・多尿・腎の萎縮~肥大
*造血系:貧血・出血傾向
*心肺系:高血圧・肺水腫・肺炎
*骨格系:腎性骨異栄養症・石灰沈着(軟部組織)
*外皮系:皮膚柔軟性低下・創傷治癒遅延
*神経系:倦怠感・嗜眠・痙攣・昏睡
*眼:網膜の剥離・出血今回、セミナーを聴くことにより、今自分が担当している子たちの治療について再検討することができました。また、日々の診療の疑問を質問したところ、詳しく教えてくださり勉強になりました。
今後も定期的に勉強会に参加し、知識のアップデートに努めていきたいと思います。
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腎性蛋白尿
先日は都内で開催された心臓病と腎臓病のセミナーに参加してまいりました。
今回は腎性蛋白尿についてご説明いたします。
【腎性蛋白尿】
腎臓病によって蛋白が尿にでてしまうことを腎性蛋白尿といいます。蛋白尿があるか調べるにはまずは尿検査をした後、追加で尿蛋白/クレアチニン比(UPC)という検査が必要になります。
こちらの検査で異常値がでてしまった場合、蛋白尿がでる他の病気を除外し腎性蛋白尿と診断します。腎臓病で蛋白尿がでていた場合、腎臓病が進行しやすいといわれています。よって腎臓病の子は定期的に尿検査をして蛋白尿がでていないか確認しておくことをお勧めいたします。
(*尿蛋白/クレアチニン比(UPC)が0.1上昇した場合、慢性腎臓病の進行リスクは24%上昇するといわれています)【腎性蛋白尿に対する治療】
①腎臓病用療法食:蛋白・リン含有量制限
②レニン・アンギオテンシン系抑制薬
③原因療法(腎生検が必要) -
尿蛋白/クレアチニン比(UPC)
先日は六本木で開催された猫の多飲多尿のセミナーに行ってきました。本日は尿蛋白/クレアチニン比(UPC)についてお話し致します。
【尿蛋白/クレアチニン比(UPC)】
尿中の蛋白が有意に高いかどうかを調べる検査です。尿を外部の検査センターに提出し検査しております。
尿検査にて蛋白尿が疑われた際、検査をお勧めしています。
尿蛋白は膀胱炎・腎臓病・免疫疾患・高血圧などによって検出されるため、まずは膀胱炎の除外と血圧測定が必要になります。<検査結果>
尿蛋白/クレアチニン比(UPC) 判定 0.2未満 非蛋白尿 猫:0.2~0.4犬:0.2~0.5 ボーダー 猫:0.4以上犬:0.5以上 蛋白尿 -
腎臓摘出術
先日はハイパージョイントセミナーの腎臓摘出術についてのセミナーに行ってきました。
【腎臓摘出術】
腎臓摘出術の適応疾患は腎腫瘍、重度の外傷、回復不能の疾患、水腎症、腎嚢胞などになります。
このセミナーは毎回手術の動画をみながら講義を受けることができるため非常に勉強になります。
【ブラッシングされているハリー君】
最近石黒さんが毎日入念にブラッシングしてくれるので、毛がサラサラです。
ハリー君もすごく嬉しそうです。
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慢性腎臓病の病期分類
先週は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「慢性腎臓病」についての講義を受けました。今回は慢性腎臓病の病期分類についてお話し致します。
治療方針や予後判定を行うため、慢性腎臓病は血清クレアチニンを基準に4つのステージに分類されています。
【慢性腎不全の病期分類】
Stage
腎機能
クレアチニン(Cre)
臨床症状など
Ⅰ
初期腎疾患~ 腎機能不全期
<1.4(犬)
<1.6(猫)
無症状・高窒素血症なし
等張尿・蛋白尿・腎構造異常あり
Ⅱ
腎機能不全期~初期腎不全期
1.4~2.0(犬)
1.6~2.8(猫)
症状:なし~軽度(多飲多尿など)高窒素血症:なし~軽度
Ⅲ
腎不全期
2.1~5.0(犬)
2.8~5.0(猫)
多彩な症状あり
高窒素血症:軽度~中程度
Ⅳ
尿毒症
~末期腎不全
5以上(犬)
5以上(猫)
積極的な治療→生命維持困難
高窒素血症:重度
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尿検査
先日は日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの腎臓病の講義を聴講しました。今回は尿検査についてお話し致します。
【尿検査】
①比重
屈折計を用いて比重を測定します。
*正常値
犬:1.030以上 猫:1.035以上②尿スティック検査
尿糖、ケトン体、ビリルビン、潜血、蛋白の有無、pHなどを調べます。
③尿沈渣
白血球、赤血球、細菌、結晶、細胞、円柱の有無などを顕微鏡で調べます。
④尿蛋白クレアチニン比(UPC)(外注検査)
蛋白の量はスティック検査で正確な値がわからないため、尿蛋白クレアチニン比を測定することをお勧めしています。
⑤尿培養・抗生物質感受性検査(外注検査)
主に細菌性膀胱炎を疑う時にお勧めしています。
特に腎臓病や膀胱炎の診断を行う際は尿検査をお勧めしています。その他様々な情報を得ることができるため、健康診断としても非常に有用な検査になります。
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慢性腎臓病と食事療法
2月2日は東京都内で開催されている日本臨床獣医学フォーラム・東京レクチャーシリーズの「慢性腎臓病」についての講義に院長と参加してまいりました。今回は慢性腎臓病についてお話させて頂きます。
慢性腎臓病の治療は多岐にわたりますが、今回は主に食事療法についてご説明させて頂きます。腎臓病の療法食の有効性についての論文を以下の表に記載いたします。
【慢性腎臓病の犬における食事療法】(Jacob 2002)
生存日数中央値
腎不全による死亡
食事変更なし
188日
65%
腎臓病療法食
594日
33%
*療法食を食べたわんちゃんの方が、余命が約3倍に延長しました。
*わんちゃんは1~2週間かけてフードを変更していくと、ほぼ100%成功するといわれています。
【慢性腎臓病の猫における食事療法】(Elliot 2000)
生存日数中央値
腎不全による死亡
食事変更なし
264日
69%
腎臓病療法食
633日
48%
*ねこちゃんも、療法食を食べた方が余命が延長します。
*ねこちゃんは数週間から1~2ヵ月間でフードを変更すると、90~95%程度で成功するといわれています。わんちゃんに比べ、ねこちゃんの方が食事を変更するのは大変です。ねこちゃんはわんちゃんに比べ、ごはんを少し変えただけで食べなくなってしまうことが多いからです。よって時間をかけて少しずつ変更していくことが大切です。
★まとめ★
慢性腎臓病のわんちゃん・ねこちゃんは、腎臓病用療法食をできるだけ早期から開始した方が長生きできます。
【慢性腎臓病と飲水について】
慢性腎臓病の子は脱水しやすいため、十分に飲水してもらうことが大切です。ねこちゃんは水に対する嗜好がはっきりしており、好みの水や好みの飲み方にこだわりがある場合が多いので、自宅で十分な量の水を常に飲めるように配慮することが重要です
慢性腎臓病の症状は多飲多尿、食欲不振、体重減少、嘔吐など多岐にわたります。高齢の猫ちゃんに多くみられる病気で、血液検査・尿検査などによって比較的診断しやすい病気になりますので、中高齢の猫ちゃんは定期的に血液検査・尿検査をすると早期発見ができるかもしれません。
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慢性腎臓病
獣医師の萩原です。私は9月26日(金)の午後から28日(日)までお休みを頂き、第11回日本臨床獣医学フォーラム年次大会という学会に参加してまいりました。
セミナーは朝から晩までに及び、内科学、外科学、腫瘍学、循環器病学、泌尿器病学など各分野の有名な講師の先生方が講演をしてくださいました。
特に慢性腎臓病の講義は勉強になりました。高齢になると、わんちゃんもねこちゃんも腎臓病になる確率が高くなってきます。腎臓病の早期発見には尿検査、血液検査が重要になります。腎臓病の症状として、多飲多尿(おしっこをたくさんして、お水をたくさんのむ)、食欲不振、嘔吐、下痢、便秘などがありますが、症状がでて来院する頃にはすでに手遅れになっていることも少なくはありません。ですから、早期発見・早期治療のためには、特に中高齢になったら定期的に診察させて頂き、身体検査・尿検査・血液検査などさせて頂くことが重要になってきます。治療法にはACE阻害薬といわれる血管拡張薬の内服、腎臓用療法食、点滴などがあるのですが、今回の講義ではACE阻害薬による内科治療の重要性について再認識いたしました。
獣医学は日進月歩で、常に勉強し続け、新しい知識をいれていかなければいけないと再認識しました。